学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

2018-01-01から1年間の記事一覧

一年を振り返って

今日、本棚の整理をした。今年一年で読んだ本は32冊(小説の38冊と併せるとちょうど70冊になる)。ペースは学生時代に比べて落ちたとはいえ、まだまだ読んでいるものだと感じていたんですが、今日の整理を通じて発見がありました。 ハードカバーの本は7冊だ…

「教養」とは何か

歳末になると、「教養」を特集に取り扱った雑誌などが増えてくる。「教養」を広く浅く解説したり、入門となる書籍を紹介したりといった具合である。長期休暇を前に一念発起する人が多いのだろう。しかし、なぜ「教養」を身に付けることを人々は求めるのだろ…

文章は書くのではなく書かれるものである

聞いた話で恐縮だが、英国の幼稚園で騒いでいた園児を静かにさせようと、若い先生が「静かにしなさい!」と叫ぶ。すると、園児たちはそれに負けないくらい大きな声になって騒いだ。そこにベテランの先生が現れ、園児たちに向かって「レイディーズ・アンド・…

トップに必要なものは何か

とあるブログで紹介された。そこでは「トップの仕事は総称して判断。判断とは全知識の総体」とあったので、今回はそれについて考察してみたい。 判断力というのは、哲学的には「特殊を普遍のもとに関係づける能力。普遍が与えられていて、それに特殊を包摂す…

思想・思考という木から落ちる言の葉②

さて、昨日の『思想・思考という木から落ちる言の葉①』の続きです。昨日の投稿で例に出したようなものは、言葉の伝えるニュアンスが「単語が異なる」ために非常に分かりやすい例でした。今日は同じ表現を用いながらも「異なるニュアンス」を持つ厄介な「単語…

思想・思考という木から落ちる言の葉①

1ヶ月ぶり以上の更新である。 僕は常日頃から「言葉を大切にして文章を書こう」と言っています。それは、「文章を書く」という行為そのものが「小さな思考」の表出であり、その小さきものの積み重ねが「思想」になると思っているからです。逆説的ですが、思…

日々是更新

昨日、弟子の一人と話をした。いわく、「僕の今の原則は先生から教わったこと」だという。卒業・就職して3年、25才になった市役所職員である。少し遠くにいるので、なかなか会うことは出来ない。しかし、今もこうして仲良くしている。今回の話の中で、「7…

志望動機の書き方

就職活動における学生の志望動機書を添削していると、最近の若者の傾向が分かる。そんな中でも、とくに2つのことが気になっているので、今回はそれらについて書こうと思う。 1つめは、「人目を気にしすぎること」です。志望動機とは、志すこと・望むことの…

ムラ社会とグローバル世界

今回は政治的に微妙な話題となることを最初に申し上げておく。そして、いわゆる「差別」意識なく率直に思うところを述べていくので、そういう前提で読んでいただけたらと思う。 先日、大阪なおみ選手がテニスの4大大会「グランドスラム」で優勝した。興奮し…

批判のための批判

政治家やテレビのコメンテーターの発言を聞いていると、その発言の意味するところを理解していないのか、いわゆるブーメラン発言が目立つようになって久しい。しかし、もっと近いところでは、あまりにも発言が無責任であることも目立ってきたように感じる。 …

モラル・ハザード

最近の不祥事を見ていると、「モラルが崩壊している」の一言に行き着くのではないかと感じている。文科省贈収賄、自民党総裁選、沖縄基地問題、東京オリンピックのボランティア問題、銀行員不祥事、東京医科大、大相撲や日大やボクシングなどのスポーツ、大…

名誉が重んじられる社会に

8月6日に投稿した記事に関連して、今日8日の読売新聞に同様の趣旨の記事が載った。「時代の流れに逆行」との批判もあろうが、実際の医療現場で女性医師の職場離脱が問題であると指摘した小欄の記事を追認してくれる記事である。 しかし、その後の報道を見…

問題の本質

東京医科大学の入試において、女子受験生や3浪している受験生に対して一定の得点操作をしていたことが発覚した。試験は公平に行なわれることが大前提であり、これに対する大学側の対応に非難が集まっている。大学からの反論は、女性医師は職場離脱をしてし…

人文諸科学を学べ

最近、IoTやAIについて学ぶ機会があり、なんとなく自分の中でイメージが固まってきたので、今回の記事ではそれを記しておきたい。 今、世界は第4次産業革命の中にいるとされている。第4次産業革命という言葉自体は、ドイツが2012年から打ち出している技…

餅は餅屋へ

池上彰氏が6日、『文春オンライン』(文藝春秋社)のコーナー内で、ニュース番組に芸能人が出演していることについて苦言を呈した。30代会社員から「最近はテレビのワイドショーや報道番組にジャニーズ(事務所所属のアイドル)をはじめ、たくさんの芸能人が…

他山の石と成せ

昨日のブログをアップしている時と同じくして、日大の内田監督と井上コーチの会見が行なわれていた。それにしても、ひどいもので、昨日のブログで予想したように直接的に学ぶことはなかった。しかし、「過ちて改めざる、是を過ちという」という論語の言葉を…

罪を憎んで人を憎まず

日大アメフト部の加害者となった男性の記者会見を見て、思うところをつらつらと書いてみようと思う。ちなみに、記録が残るインターネットの特殊性に鑑み、彼の将来を応援する意味でも、ここでは彼の名前などの個人情報は載せないので、もし、コメントする人…

常識と良識

こうした概念の問題にあたるときは、まずは辞書(広辞苑)を引いてみる。 常識 普通一般の人が持ち、または、持っているべき標準知力。 専門的知識でない一般的知識とともに、理解力、判断力、思慮分別などを含む。 良識 偏らず適切・健全な考え方。そういう…

人の振り見て

巷間、TOKIOメンバー山口さんのアルコール依存症が話題に上っている。彼がアルコール依存症なのかどうかはさておき、「依存症(中毒)」なるものに僕の意識が向いた。 僕が日常で目にする依存症は、スマホである。老若男女を問わず、町中はスマホ依存症患者…

自分の軌跡

当ブログへのご訪問、誠にありがとうございます。こんなにも遅筆のブログなのにもかかわらず、平均すると、1日あたり30~40人にお越しいただいており、月平均1000~1200人もの人々に読んでいただいております。開設からの累計でもう少しで5万人を達成しま…

ベクトルの混在した世界

「低欲望社会」と言われるようになって久しい。この言葉は2016年頃、経営コンサルタントの大前研一さんが名付け親のように記憶しているが、「若者の○○離れ」に代表されるような現象を指す。そして、僕はこれが従来の経済学が輝きを失う原因でもあり帰結でも…

完璧ということ

完璧主義者に安穏は訪れない。でも、完璧主義者には憧れる。なんせ仕事も遊びも完璧なのだ。とはいえ、しょせんは人間のすること。人間のすることに真の完璧ということは存在し得ないだろう。だから、人間のすることに完璧という場合、神学的・哲学的・思想…

まじめに真実を伝えるぞ。

胸襟を開いて真摯に、そして誠実に向き合えば、どんな人とも分かり合えるというのは人間関係における真実である。人の心に国境線はない。 北朝鮮の金正恩氏が中国を電撃訪問した。彼と彼の国の首脳部は国際的に信用に値する。訪中で得られた合意や決意は必ず…

順番を間違えるな

「科捜研の女」200回記念スペシャル「200の鑑定」(2018年3月15日放送)は、昨今の働き方改革やブラック企業、残業などの労働を巡る問題に対する番組からの1つの回答であったように思う。 番組では、日野所長が働き過ぎによって倒れたことがきっかけとなっ…

言葉の持つ威力

今日、職場で次のような言説を耳にした。 左利きの人は13人に1人。AB型の人も13人に1人。そして、LGBTの人も13人に1人。LGBTの人は決して稀な存在ではない。 これを耳にしたとき、口には出さなかったが感じたことがある。左利きは1種類、AB型も1種類なのに…

説明責任なるもの

2000年代に入った頃からであろうか、やたらと「アカウンタビリティ」なる経営学用語が日常生活に幅をきかせ、やがてカタカナでは通じにくいので「説明責任」と言い換えて、この言葉が横行してきたように思う。 話は少し逸れるが、「横行」という言葉が「秩序…

民主主義は原初システム?

今年の夏、文化人類学者のエマニュエル・トッドが新刊を出すという。今のところ、フランス語のものしか発売の告知がない。英語ないしは日本語でも発売されるとは思うが、秋以降になるだろうか。待ち遠しい。 さて、待ち遠しい理由であるが、発売に関するプロ…

言葉は品性

マーガレット・ヒルダ・サッチャー元英首相の父、アルフレッド・ロバーツが幼い娘によくこう言っていたそうだ。 思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか…

「お金2.0」を読んで

今、ベストセラーになっている「お金2.0」を発売日に購入。「なるほど」と読んでいる間に、ビットコインが50%近く急落し、「おいおいおい」となった。印象深い読書となった。 この本を手にとってみようと思ったのは、「仮想通貨」なるものを胡散臭く感じ、…

第4次産業革命の世界とは何か

昨年から、人工知能(AI)とかIoTとか自動運転車とか仮想通貨とかフィンテックとかを耳にする機会が増えた。こうした変化は、第4次産業革命と呼ばれている。簡単に歴史をおさらいしておくと、第1次産業革命は18世紀末以降の蒸気機関ないし水力による機械化…