学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

「お金2.0」を読んで

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 今、ベストセラーになっている「お金2.0」を発売日に購入。「なるほど」と読んでいる間に、ビットコインが50%近く急落し、「おいおいおい」となった。印象深い読書となった。

この本を手にとってみようと思ったのは、「仮想通貨」なるものを胡散臭く感じ、中央銀行によるコントロールの効かない、無法状態の「通貨」なんぞ、一時の流行だろうと思いつつ、しかし、今現在の潮流なら教壇に立つ身にとって「知らない」では済まされないだろうなぁと思ったからだ。かなり斜めに見ながら、この本を手にしたことになる。

しかし、書店で手に取ってパラパラめくってみると、「買わなくてはならん」と思った。そこには「あまりにも既存社会の常識とは違うので、今の経済のメインストリームにいる人たちにとっては懐疑や不安の対象になりやすい」と書かれていたのだ。経済学が専門ではないが、そこそこ学んできた自負はあり、12月中旬に経済学者と「仮想通貨」について議論を交わした時に、これを経済学の中でどう位置付けるかと話し、位置づけできないねで終わっていただけに、見透かされているような気がした。

だから、この著者がこの新しい現象をどう位置付けるのかを知りたくて購入した。本書の冒頭でも述べられているように、この本は専門家向けに書かれたものではない。だから、やや薄っぺらいというか、物足りなさは残った。現象を感覚的に述べているからだ。ここは批判すべきところではない。なんせ著者が最初に断りを入れているところなのだ。

言ってみれば、叩き上げの人物が自らの体験や嗅覚を頼りに、それまでの体験を整理し、まとめたものである。そういうドキュメンタリーというか、新潮流をのし上がってきた人物伝として読むと面白い。

一言で読後感想を述べるとすれば、「仮想通貨」とはカギカッコ付きの通貨であり、通貨と表現するよりは「株」である。しかも、投機的なものである。パラダイム・シフトをしないといけないと思いつつ、把握の仕方は「既存社会の常識」に囚われたままであると反省している。しかし、そうとしか把握できない。ここがパラダイム・シフトの難しいところだ。

今後とも、アンテナを張って少しずつ既存の殻を破るよう努めていこうと思う。