学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

言葉論考

新元号 解題

新元号 早速にも練習をしてみました。「令」の字はなんともバランスの取り方が難しい。「和」のほうはいくぶん慣れている字でした。二番煎じ、三番煎じになることを覚悟の上で、改元を記念して備忘録として1つ記事を投稿しておきたい。 初春の令月(れいげ…

文章は書くのではなく書かれるものである

聞いた話で恐縮だが、英国の幼稚園で騒いでいた園児を静かにさせようと、若い先生が「静かにしなさい!」と叫ぶ。すると、園児たちはそれに負けないくらい大きな声になって騒いだ。そこにベテランの先生が現れ、園児たちに向かって「レイディーズ・アンド・…

思想・思考という木から落ちる言の葉②

さて、昨日の『思想・思考という木から落ちる言の葉①』の続きです。昨日の投稿で例に出したようなものは、言葉の伝えるニュアンスが「単語が異なる」ために非常に分かりやすい例でした。今日は同じ表現を用いながらも「異なるニュアンス」を持つ厄介な「単語…

思想・思考という木から落ちる言の葉①

1ヶ月ぶり以上の更新である。 僕は常日頃から「言葉を大切にして文章を書こう」と言っています。それは、「文章を書く」という行為そのものが「小さな思考」の表出であり、その小さきものの積み重ねが「思想」になると思っているからです。逆説的ですが、思…

言葉の持つ威力

今日、職場で次のような言説を耳にした。 左利きの人は13人に1人。AB型の人も13人に1人。そして、LGBTの人も13人に1人。LGBTの人は決して稀な存在ではない。 これを耳にしたとき、口には出さなかったが感じたことがある。左利きは1種類、AB型も1種類なのに…

言葉は品性

マーガレット・ヒルダ・サッチャー元英首相の父、アルフレッド・ロバーツが幼い娘によくこう言っていたそうだ。 思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか…

ブーメラン

最近の政治家、マスコミ評論家、運動家にたいして、言葉をないがしろにしているなぁと強く感じる。公的な場で発言をして、その自分の発言の重み、影響力を考慮できていないばかりか、その場しのぎの軽い言葉が横行している。あまりにも発言が軽いので、一つ…

モノの見方の在り方

今日、中国で全国人民代表大会が開かれる。ここでは格差社会の貧困層への対策が一つの目玉になっている。日本での格差社会など比ではない。爆買をしに日本に来る人たちがいる一方で、およそ7000万人が年収4万円で生活している。月収に直して約3300円である…

言葉の魔力 その2

前回の投稿に続き、言葉に関する考察をしていきたい。 日本には「言霊(ことだま)」という思想がある。言葉には不思議な霊力が宿るという意味である。口に出した言葉が現実の事象に影響を与えると信じられてきた。非科学的と退けようとも、これは史実である…

言葉の魔力 その1

言葉を口にするまでは、あなたが言葉を支配する。しかし、いったん口にしてしまえば、今度は言葉があなたを支配する。 僕はこの言葉を戒めとして心に留めている。人と人との信頼関係は社会の基本に位置するものだが、その信頼関係は誠実さを基調としながらも…

文章は美学である

国語的な決まりはないらしいが、文章を書いたり読んだりしていると、国語の記述方法で気になることがいくつかある。たとえば、漢字で書くべきか、平仮名で書くべきか、という問題がある。 「気になること」か「気になる事」か。「思うこと」か「思う事」か。…

丙申 新春

ブログをご覧のみなさま、新年あけましておめでとうございます。今年は丙申(ひのえさる)です。今年が申年と知っていても、丙であることを知っている人は少ないかもしれませんね。「干支(えと)」という場合、「十干(じっかん)」と「十二支(じゅうにし…

言葉は思考のツール

あまりにも当たり前のことかもしれないが、考えることは言葉の営みである。一人で考え事をしていようとも、頭の中では基本的に言葉で考えている。だから、語彙が少なければ、自然と思考は粗雑にならざるを得ない。考えるということを支えているのは、語彙の…

考える作法

昨日の投稿で、「考える作法」はまた別のお話と書いたので、今日はその作法について書いてみたい。 「考える」とは論理的思考のことで、具体と抽象を往復することである。こう書くと難しく感じるかもしれないが、日常生活の中で普通にやっている。 ここで、…

消えた祭日

今日は「秋分の日」。これは本来は皇室祭祀の一つ、「秋季皇霊祭」である。皇室祭祀由来の休日は他に、「春分の日」が「春季皇霊祭」、「昭和の日」(4月29日)が「昭和節」、「文化の日」(11月3日)が「明治節」、「勤労感謝の日」(11月23日)が「新嘗祭…

反知性主義

最近、「反知性主義」という言葉をよく耳にする。「反-知性」と「主義」という言葉の組み合わせで、「主義」というからには一定の信念を含む概念であろう。その含む価値観は何かというと、「反知性」、すなわち「バカ」である。「知性に反対する」と言うだ…

モラールのある社会

「モラール」を辞書で引くと、「集団を構成する成員たちの多くが,その集団に対する信頼,集団内での自分の役割についての自信,集団目標に対する熱意,集団への忠誠心などを持っているような集団内の心理的状態。本来,軍隊用語では士気という」とある。つ…

ダウントン・アビー

僕の大好きなイギリスのドラマ『ダウントン・アビー』をめぐって、「シネマ・トゥディ」が次のように報じた。 最終シーズンを迎えるテレビドラマ「ダウントン・アビー」は、エリザベス女王をもとりこにしているとPeopleが報じた。 「アット・ホーム・ウィズ…

生き延びる知恵

『孟子』の一節に「以小事大」(=小を以って大に事える)というのがある。そこには小国の越が呉に仕えた例が知恵として書かれている。つまり、大国を相手取った「小国のしたたかな外交政策(知恵)」である。しかし、後世になると、「小国はその分を弁えて…

カラスへの名誉棄損

「烏合の衆」という言葉がある。この言葉を使おうと思って、ふと立ち止まった。この表現は、カラスが集まってカァーカァーとやかましい状況を指し、そこから規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの役立たずの群集や軍隊のことを意味するようになった。 当…

「学府」を考える

「最高学府」という言葉にある「府」は、「中枢の役所」という意味である。国の中枢であれば「国府」、今は無き「東京府」、そしてかつての「京都府」、「大阪府」など、中枢機関には「府」がつく。東京は唯一のものとして差別化するため「都」に改められた…