学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

教育論考

プロや職人の衰退は社会の衰退

「本職に任せる」とか「本職にはかなわない」というような表現がありますが、これはそれを専門とする人、玄人(くろうと)の取り組みにはかなわないという意味である。本来的には「本職」とは「その人がおもに従事する職業」であるが、上述したような表現の…

学習指導要領に見る社会の変遷

仕事にかまけてブログ更新をサボってきました。およそ2ヶ月ぶりの更新となります。年度末の忙しさは悲惨ですね。さて、この2月と3月は大学や専門学校の教員と交流し、また教員研修の講師としても活動をしてきました。この中で感じてきたことを今回は題材…

人物試験というナンセンス

昨日の投稿記事に続いて、今日は人物試験なるものについて考えてみたいと思う。 昨日の記事の中で、僕は平成時代に進んだ人物重視傾向の教育および就活(採用)についての流れを説明し、しかし、人物重視ということ自体はエリート層においては戦前からも続く…

新しい時代へ

新年、あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。 「平成最後の~」というフレーズ、ほんと、メディアは好きですね。この数週間で何度聞いたことか。ちなみに、通常時であれば、メディアは「初の~」が好きですね。ひどい時には「※※を除けばこれが…

文章は書くのではなく書かれるものである

聞いた話で恐縮だが、英国の幼稚園で騒いでいた園児を静かにさせようと、若い先生が「静かにしなさい!」と叫ぶ。すると、園児たちはそれに負けないくらい大きな声になって騒いだ。そこにベテランの先生が現れ、園児たちに向かって「レイディーズ・アンド・…

トップに必要なものは何か

とあるブログで紹介された。そこでは「トップの仕事は総称して判断。判断とは全知識の総体」とあったので、今回はそれについて考察してみたい。 判断力というのは、哲学的には「特殊を普遍のもとに関係づける能力。普遍が与えられていて、それに特殊を包摂す…

思想・思考という木から落ちる言の葉②

さて、昨日の『思想・思考という木から落ちる言の葉①』の続きです。昨日の投稿で例に出したようなものは、言葉の伝えるニュアンスが「単語が異なる」ために非常に分かりやすい例でした。今日は同じ表現を用いながらも「異なるニュアンス」を持つ厄介な「単語…

思想・思考という木から落ちる言の葉①

1ヶ月ぶり以上の更新である。 僕は常日頃から「言葉を大切にして文章を書こう」と言っています。それは、「文章を書く」という行為そのものが「小さな思考」の表出であり、その小さきものの積み重ねが「思想」になると思っているからです。逆説的ですが、思…

日々是更新

昨日、弟子の一人と話をした。いわく、「僕の今の原則は先生から教わったこと」だという。卒業・就職して3年、25才になった市役所職員である。少し遠くにいるので、なかなか会うことは出来ない。しかし、今もこうして仲良くしている。今回の話の中で、「7…

志望動機の書き方

就職活動における学生の志望動機書を添削していると、最近の若者の傾向が分かる。そんな中でも、とくに2つのことが気になっているので、今回はそれらについて書こうと思う。 1つめは、「人目を気にしすぎること」です。志望動機とは、志すこと・望むことの…

名誉が重んじられる社会に

8月6日に投稿した記事に関連して、今日8日の読売新聞に同様の趣旨の記事が載った。「時代の流れに逆行」との批判もあろうが、実際の医療現場で女性医師の職場離脱が問題であると指摘した小欄の記事を追認してくれる記事である。 しかし、その後の報道を見…

餅は餅屋へ

池上彰氏が6日、『文春オンライン』(文藝春秋社)のコーナー内で、ニュース番組に芸能人が出演していることについて苦言を呈した。30代会社員から「最近はテレビのワイドショーや報道番組にジャニーズ(事務所所属のアイドル)をはじめ、たくさんの芸能人が…

他山の石と成せ

昨日のブログをアップしている時と同じくして、日大の内田監督と井上コーチの会見が行なわれていた。それにしても、ひどいもので、昨日のブログで予想したように直接的に学ぶことはなかった。しかし、「過ちて改めざる、是を過ちという」という論語の言葉を…

罪を憎んで人を憎まず

日大アメフト部の加害者となった男性の記者会見を見て、思うところをつらつらと書いてみようと思う。ちなみに、記録が残るインターネットの特殊性に鑑み、彼の将来を応援する意味でも、ここでは彼の名前などの個人情報は載せないので、もし、コメントする人…

完璧ということ

完璧主義者に安穏は訪れない。でも、完璧主義者には憧れる。なんせ仕事も遊びも完璧なのだ。とはいえ、しょせんは人間のすること。人間のすることに真の完璧ということは存在し得ないだろう。だから、人間のすることに完璧という場合、神学的・哲学的・思想…

説明責任なるもの

2000年代に入った頃からであろうか、やたらと「アカウンタビリティ」なる経営学用語が日常生活に幅をきかせ、やがてカタカナでは通じにくいので「説明責任」と言い換えて、この言葉が横行してきたように思う。 話は少し逸れるが、「横行」という言葉が「秩序…

楽観的に目標を見て、悲観的に手段を考える

昔、自分の影響力が自分のみだった頃、あるいは友達と対等に接している頃、僕の発言は自由気儘に思った通りを言っていれば済んだ。ところが、いやしくも教壇に立つようになると、その発言は「回答」ではなく、ある種の「正解」になってしまうのである。僕の…

手帳と僕

さて、今日から8月になり、ラインの手帳の話題もチラホラとネットでヒットするようになった。僕は手帳にはかなりこだわりを持っている。手帳にというより、文房具にと言ったほうが正鵠を得ているかもしれない。手帳を含む文房具は僕の生活の中心であり、よ…

盗っ人猛々しい

今日は暦では「大暑」。24節気の一つで、一年で最も暑い日と言われるが、僕の住む関東では梅雨明けが遅れ、23℃と5月の陽気である。季節感が狂う昨今ではあるが、狂ってきたのは人の感覚、人の常識も同様のようだ。 奨学金を巡る問題が、少し前から巷間話題…

学力崩壊の大学教授

毎週月曜の23:15から放送されている「橋下×羽鳥の新番組(仮)」を視聴している。久しぶりに「まともな討論番組」かと期待していたのだが、レベルの低い大学教授の出演によって、その質を大いに下げられていることが不満だ。 森永卓郎教授は「論客」という…

道徳と倫理

最近、とある学生が宗教について考えていて、彼の専門(シティズンシップ教育)からしても、「公」「公共」との関わりから重要である「倫理」とか「道徳」というものについて考える機会を得たので、それをここに記しておきたい。 西洋思想で言えば、この両者…

結果を求める前に

人を説得するには、「筋道」「論理」が必要である。建前の世界では、つまり現実の実生活の中では「論理的に筋道を通すこと」が社会的関係を築く上でとても重要である。似たような言葉で「理屈」があるが、「屈」は捻じ曲げるという意を持つので、筋道を捻じ…

対立視点を知ること

昨日の投稿で、知識を集めるということは、深い考察に繋がると書いた。これは知的作業には欠かせないことではあるが、人間の器を育てるためにも重要なことだと感じている。これができると、実は感情的にならないで済むようになるからだ。穏やかで落ち着いた…

知識の集め方

知識を得ることはとても大切である。インプットがなければアウトプットすることもできないし、アウトプットはインプットよりも少ないものになるから、インプットしていく知識は多いほどよい。ここに読書の必要性がある。読書習慣のあるなしは、その人の人生…

就職活動の勘どころ

昨日の記事への補足を少ししたいと思います。昨日の「本当の自分」=「理想の自分」は、就職活動で言えば、「就職したらどんな職員になりたいですか?」や「理想の社会人像はどんなものですか?」という質問に対応するし、志望動機に結び付けることもできま…

本当の自分と、その作り方

「本当の自分」なるものを求めて1人旅に出る、と時折聞くことがあります。あるいは就職活動を始めたばかりの学生が「僕は何になりたいのか」「本当の僕は何に向いているのだろう」というような疑問に直面している姿に出会う機会があります。そうした時に僕…

伝えたいもの

二宮金次郎と言えば、働いている時間も惜しんで熱心に勉強に取り組んだという勤勉精神を代表する人物である。この勤勉を奨励するために全国各地の学校の校庭に二宮金次郎像の設置が進められてきた。そして、昨日、栃木県日光市の学校に新しく設置された二宮…

教師を育てる

2016年2月3日、文科省による英語力調査の結果が発表された。去年のものよりは少し改善しているものの、高校3年間の教育課程を無に帰すかのような結果である。文科省の政策は以下のようなものである。 グローバル人材の育成に向けた取組として、外部試験団…

自己研鑽の必要な理由

誠実さというものには、人を信じるという前提が伴う。そして、疑心暗鬼や自暴自棄、被害妄想に駆られがちな弱い人間にとって、この「人を信じる」という行為は非常に難しいものである。 性分として人を信じられない人がいる。そのような人たちは平気で人を裏…

今日は天長節

今日は天皇誕生日。かつては「天長節」と呼ばれていた祝日である。今上天皇陛下は今日で82歳になられた。そこで、インターネット上では、本日零時25分頃に女学生によって投稿されたツイッターが話題になっている。 これに似たつぶやきは、去年もあった(左が…