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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

人口問題と資本主義

経済論考

昨日発表された国勢調査の結果で、日本の人口が1億2711万人となり、1920年の調査開始以来はじめて人口減となったと報道された。ここで注意しておきたいのは、この数値には外国人も含む総人口の減少ということである。死亡者数が出生者数を上回る自然減は2007年からの傾向である。

まずは人口について一喜一憂する前に、国土交通省の白書からいくつかデータを見てみたい。最初に総人口そのものであるが、平安時代から2100年までの推計・予想というかなりの長期スパンのものを見てみよう。

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これを見ると、明治維新以降の急激な増加と終戦を境にしたさらに急激な増加が看て取れる。つまり、産業革命や高度経済成長という資本主義や国際化(やがてはグローバル化)の進行が生産性を高め、それによって爆発的に人口が増加したことが分かる。次に近年の人口動態である。

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1973年に200万人の新生児数は、2012年には100万人と半減している。1947年に4.54あった合計特殊出生率は2005年には1.26にまで減少している。1973年生まれが大学を卒業するころにバブル経済崩壊の影響を受けて就職氷河期となり、四角で囲われた年代はそのままニート・引きこもりになり、働いている人でさえ年収の低下が著しい。

ここの大きな問題はとにかく人数にある。極端なことを言うが、社会が一定の労働者を欲していると仮定して、2012年を基準とすると、四角で囲われた世代は半分が就職できればよく、それも供給過剰から世代の労働者の価値が低下しているともいえる。続いては内訳人口である。

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真ん中に来る2010年を境に、過去と未来予測で左右に分かれているが、20~39歳の人口比は3人に1人から4人に1人となり、予測では2060年には6人に1人となる。2010年時点で15歳未満が13%、15~64歳が64%、65歳以上が23%となっている。65歳以上人口が7%で高齢化社会、14%で高齢社会、21%で超高齢社会であるので、23%という数字は非常に高い。

一方で、資本主義は都市化を生み、地方の過疎化と都市の人口増加が問題化したが、2015年国勢調査でも、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の人口は、約3613万人で約51万人の増加となっている。しかし、この東京圏の人口も、予測では減り始めるとされている。地方から都市への人口供給力が失われているからである。経済界ではこれを補うために毎年20万人の移民政策を検討しているが、この数字は年間の人口減に対応した数字である。

さて、この人口減が問題になっているのは、生産性が失われるとか経済成長ができないとかいった資本主義社会の問題だからである。資本主義は市場の拡大を求める。世界的には、最初は植民地に、そしてインターネット空間、宇宙空間へと広がり、現在はアフリカ大陸なども拡大する市場として捉えられているが、そろそろこれに限界が来ていると言われている。同じように、日本での人口の増加は市場の拡大を意味するし、人口の減少は市場の縮小となり、資本主義にとっては危機的な状況となる。

しかし、統計を見てみると、人口の増加は産業革命以来の異常事態なのであって、異常事態から元の状態に戻ろうとする振り子現象のようにも思える。戦後から1980年代までの高い出生率による超高齢社会の到来であって、1990年代からは横ばいということを見ても、人口構成比は是正されていくようにも思える。つまりは、資本主義という前提でいれば、破滅していくということに他ならない。

だから、思想面では資本主義という価値から新たな価値へとパラダイムシフトが起きている。スローライフとか田舎への移住とか農業回帰などの現象は、小さいながらも資本主義からの脱却の動きである。あくせく働いて追い立てられるように生きていくくらいなら、のんびりと自分のペースで自分の人生を楽しみたいという若者が増えているのもこの流れのうちにある。先に紹介したG型・L型経済構成も、経済構造を二分化したという点で、過渡期の現在を表しているようにも思える。

僕はそんなに遠くない将来、資本主義という価値観に疑問符が投げ掛けられ、社会思想的な変換が来るのではないかと感じている。