学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

時事論考

パリ同時テロについて

パリで悲惨な事件が起きた。これに関する考察をする前に、まずは犠牲者に哀悼の意を捧げ、遺族に弔意を表し、そして今なお生死の境をさまよう人たちの回復を願う。 今回のテロ事件を振り返るに、僕は最初に第二次世界大戦時のヒットラーを思い出した。ヒット…

ハロウィンに思うこと

ハロウィンが盛り上がりを見せている。渋谷での大混雑が話題となり、その経済的影響がバレンタインやクリスマスを超えたとか、あるいは本来はケルト民族の収穫祭だという本旨説明とか、マスコミやネットで取り上げられている。そうしたものを目にしているう…

迷走する日本

こんなニュースが飛び込んできた。今年は就職活動時期を後ろ倒しして8月から筆記面接試験などの選考活動を行なうとしてきたが、企業の足並みは乱れ、大企業の混乱は中小企業の採用活動に大きな影響を与え、現場は混乱した。来年は再び日程変更をし、6月に…

落としどころ

人間関係にはすべて落としどころが存在する。この落としどころを見極めることはなかなか難しい。 三井不動産レジデンシャルが販売した横浜市の大型マンションを巡る事件では、旭化成はずいぶんと誠実な対応をしていると思う。もっとも、うがった見方をすれば…

中国の粗が目立つ

ここ3日間ほど、熱にうなされていた。昨日からようやく回復基調に乗った。咳は先週木曜あたりからだったので、ほぼ一週間の風邪っぴきさんとなった。年を取ると年々、病気からの回復に時間を要するようになる。健康には留意しなければとの思いをますます強…

トゥキディデスの罠と国際秩序

紀元前5世紀、新興のアテネと、それに対抗する既存勢力のスパルタとの間にぺロポネソス戦争が起きた。ここから歴史家のトゥキディデスは「新興の大国は必ず既存の大国へ挑戦し、既存の大国がそれに応じた結果、戦争がしばしば起こってしまう」との法則を見…

反知性主義

最近、「反知性主義」という言葉をよく耳にする。「反-知性」と「主義」という言葉の組み合わせで、「主義」というからには一定の信念を含む概念であろう。その含む価値観は何かというと、「反知性」、すなわち「バカ」である。「知性に反対する」と言うだ…

仏の話に耳を傾けよ

まぁ、なんというか、宗教家は世俗のことに口出ししないほうがいいと思う。宗教の世界に生きていれば「いい話」をする人で終わるのだろうが、政治の話を「法話」として語ってくるのであれば、それは仏教への冒涜であるように感じる。世俗の話として、この「…

安保関連法案の論点整理

今般の安全保障関連法案がなにか、不明な人も多いことだろう。もっとも、こんなに国民的議論になっている安全保障関連法案を知らない人が多いのは不思議でもある。賛成派も反対派も何に賛成し、反対しているのか、不明なままに意思表示をしているような感す…

デモはデモでもデモ違い

安全保障関連法案をめぐって、国会周辺で、あるいは日本全国あちこちでデモが行なわれている。多く報道された場面で、「国民の声を聴け」とか「国民の声を無視するな」と叫び、反対として集まった群衆の大きさを誇張して伝えていた。17日に参議院の委員会を…

人類の壮大なる実験

今年だけでヨーロッパに流入した難民の数は、45万人に及ぶという。この数字のすごさは比較を通してより明らかとなる。 東京都江東区の人口は23区中8位の46万人、東京都葛飾区の人口は同9位の44万人である。日本で一番人口の少ない都道府県は、鳥取県の57万…

立法の仕事と司法の仕事

今回の安全保障法案をめぐる一連の議論を見ていると、抽象的論議の限界を感じる。 「集団的自衛権」「限定的な行使を容認」「我が国の存立が脅かされる事態」などをめぐって、定義が問題になっている。たとえば、負傷した他国の軍人を日本の病院施設に収容す…

非礼な意見表明

今、安保法案が巷間の話題に上っているが、少し整理してみたい。 基本的に賛成派・反対派の主張は平行線である。お互いがお互いを「分からず屋」と思っていることだろうと思う。それは同じ現象をどう捉えるかという価値観と視座の問題だからである。テレビで…

イデオロギーの終焉

ダニエル・ベルが1960年に刊行した「イデオロギーの終焉(The End of Ideology)」では、先進資本主義諸国における「豊かな社会」の到来とともに、階級闘争を通じた社会の全面的変革なる理念はその効力を失ったとされた。ベルやシーモア・M・リプセットを代…

大人の学び

最近、書店で大人のための「学び直し」がブームのようである。山川出版の「もう一度読む」シリーズがブームの発端であろうか。 もういちど読む山川世界史 作者: 「世界の歴史」編集委員会 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 2009/09 メディア: 単行本 購…

生き延びる知恵

『孟子』の一節に「以小事大」(=小を以って大に事える)というのがある。そこには小国の越が呉に仕えた例が知恵として書かれている。つまり、大国を相手取った「小国のしたたかな外交政策(知恵)」である。しかし、後世になると、「小国はその分を弁えて…

矛盾だらけの人々

中国で抗日戦争勝利70周年を記念した行事が取り行われた。アチコチに突っ込みどころ満載で、なにからどう書けばよいやらという感じだ。まずは、記念撮影を見てもらいたい。 真ん中に習近平国家主席夫妻が「鎮座」し、左にロシアのプーチン大統領、右に韓国の…

なんか気持ち悪い

9月3日、次の二つのニュースに触れて、気持ち悪さを感じた。 オバマ大統領 戦後の日米は「和解の模範」 NHKニュース “最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇示 “最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇示“最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇…

ネットの力

オリンピックのエンブレム白紙撤回問題を巡って、ネットの力が発揮されたという。このあたり、正直なところ、僕はまだ現実に追いつけていない。 ネットの力では、2010~2011年に起きた「ジャスミン革命」がすぐに思い浮かぶ。チュニジアで一人の青年の焼身自…

泥縄

安全保障関連法案に関して、当ブログでも一言、付言しておきたい。 安全保障関連法を成立させると、やれ徴兵制が始まるだの、やれ戦争が始まるだのという立場の人たち(主に野党や一部の運動家)がいるが、僕の立場は、それらと真っ向から対立する。誰かが指…

ニュース難民

ここ数年の僕は、ニュース番組に飢えている。新聞やラジオから「ニュース番組」が絶滅した。 平日朝7時~9時は、出社する準備をしながらテレビを、出社する電車の中でラジオを視聴しているのだが、「ニュース」がないのだ。代わりに何をしているかといえば…

中国という民主国家

中国は民主国家である。こういうと首をかしげる人が多いかもしれない。だからこそだろう。中国共産党機関紙がフランスの新聞に鋭く反応している。フランス国際放送、RFIのニュースサイトで「今の平和主義の日本が、軍拡主義の中国に服従することはない。…

「意識高い系(笑)」

「モラトリアム人間の時代」(小此木啓吾 著、中公文庫)という本がある。初出は1977年である。モラトリアムとは、簡単に言えば「学生は社会人になることを猶予されている」という捉え方である。「学生のうちに遊んでおけよ」「学生のうちしか遊べないんだか…

全国統一『大学生』テスト

文系学問の質的低下を食い止めるには、どのようにすればいいのだろうか。 そもそも論を展開すれば、たとえば、法学部は法曹関係者を、文学部は文学者を、経営学部は経営者やコンサルタントを輩出するところである。医学部が医者を、薬学部が薬剤師を輩出して…

文系だ理系だとしゃらくせぇ

6月に文科省が「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(PDF)という文書を各国立大学法人へ通知した。18歳人口の減少を見すえ、教員養成系や人文社会科学系の学部について、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよ…

アメリカ流『国民の育て方』

アメリカ大統領選挙のニュースが入り始めた。これから来年にかけて盛り上がりを見せてくるだろう。前々回選挙では,アメリカもずいぶんと寛容になったものだと感じた。移民で成立する人工国家は,民主共和両党ともに世界的には保守的であり,米国民も保守的…

ヒーロー渇望症候群

最近,甲子園での高校野球に関する報道を見ていて,本当に日本人はヒーローが好きなんだなぁと思う。野球は少なくともチーム戦のはずであるが,ある特定の選手以外は蚊帳の外である。ある活躍した高校一年生をして「~の夏,終わる」というタイトルの付け方…

命の価値を下げる行為

「学生ハンスト実行委員会」が、安保関連法案制定を阻止するために、現役の大学生たちによって8月27日(木)より国会正門前でハンガーストライキを決行することを発表した。 声明文 - 学生ハンスト実行委員会「僕らも生命をかけてやるという覚悟はある」と…