学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

大人の学び

最近、書店で大人のための「学び直し」がブームのようである。山川出版の「もう一度読む」シリーズがブームの発端であろうか。

もういちど読む山川世界史

もういちど読む山川世界史

 

 科目についても、国語、英語、理科、社会というように多岐に及んでいる。学生の頃にあれほど受動的に学ばされていたのに、なぜ大人になってからお金を出してまで勉強しようとしだすのであろうか。

実は大人ほど学ぶことの楽しさを味わえるのである。学生の頃は進学するために、進級するために、就職するために、仕方なく学んでいた。それはどこか詰め込み式で、興味の向くところとは異なっても、試験範囲を踏破するために、机に向かわなくてはならなかった。ところが、大人になると、自らの興味の赴くままに、自分のペースで好きに学べるのである。

一昔前はキャリア・アップのための自己啓発が盛んであったが、その勉強は学生時代のそれと同じである。それに疲れたのか、今は中学や高校の教科書(あるいは再編版)や参考書が人気のようである。そうすると、意外にも面白さにはまり、あれこれと学ぶ楽しさを見いだしてくるようだ。

こうした傾向は、今後の高齢社会では非常に有益であると思う。寿命が延びたこともあって、人生を豊かにするための学びは、引退後の生活に彩りを加えてくれるものとなるだろう。生涯学習は今後、ますます注目を浴びてくるだろうと思う。進学や進級、就職といった目的のない学びこそ、人生を豊かにする学びなのであると思う。自宅を出て目的地に向かい、目的を果たしたら自宅に戻るという生活ではなく、あちらこちらへと散策して歩くことも大切である。そこに新たな発見が待っている。