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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

教師を育てる

2016年2月3日、文科省による英語力調査の結果が発表された。去年のものよりは少し改善しているものの、高校3年間の教育課程を無に帰すかのような結果である。文科省の政策は以下のようなものである。

グローバル人材の育成に向けた取組として、外部試験団体と連携した生徒の英語力の把握・検証による戦略的な英語教育改善の取組支援を提言。また、成果指標として、高3生の英語力の目標(卒業時に英検準2~2級程度以上)を設定

実際の取り組みは平成23年度から始まっている。その結果、高校3年生の英語を読む力は32%、聞く力は26.4%、書く力は17.9%、話す力は11%しか高校生のレベルに達していないことが分かった。指標で言うと、高校生の70~90%では英検5~3級程度、TOEICでは200~380点程度の学力しかないことになる。もっとも優秀な英語読解力に限ってみても、準2級と3級の境目近辺に中央値がある。つまり、中学3年~高校2年までの領域に大多数が分布しており、ごく僅かしか高卒程度である2級には及んでいないという結果なのである。

とはいっても、数字は眉唾物であることがほとんどだ。ちょっと探してみたが、中学生がどれくらいの割合で英検3級を取れるのか、高校生がどれくらいの割合で英検2級を取れるのか、昔のデータが見当たらない。学年別の受験者における合格比率すら資料がない。あったとしても、自ら英検を受けに行く生徒は英語が得意であったりやむにやまれぬ事情があったりして、しっかりと対策勉強したものであって、公立学校において調査目的で受けさせた場合には、日本英語検定協会の持つデータを大きく下回ることは想像に難くない。極端を言えば、10年昔、20年昔も同様のデータであったかもしれないわけだ。今回の話で学力の低下を論じることはできない。

つまり、純粋に2020年のオリンピックやグローバル化の時代に合わせて英語教育を見直しているに過ぎない。正直、グローバル化グローバル化とかまびすしいと思う。しゃらくさいと思う。ま、それはともかく、実際、今の20代、30代、40代で英語のできる人材が多く育っていないことからも、昔から英語教育が破綻していたことは事実であろう。しかし、そうした世代の教師が、目指す英語教育を施せるかどうか、どうして疑問を持たないのだろう。英語教師育成を先に達成してからでなければ、絵に描いた餅でしかない。

文科省は中学校の英語の授業は英語で行なうという方針を示し、2018年度から段階的実施、2020年度からは全面実施を掲げているが、実際には、2012年12月に行なわれた文科省の調査によると、中学校の英語教員のうち、英検準1級以上に相当する資格を持つ英語担当教員の割合は27.7%となっている。ちなみに、準1級の目安は、大学の中級程度で「Eメールへの返信など実践的な英作文」ができるレベルとされている。しかし、このレベルでは英語で授業を提供することは至難の業だと思う。

たとえば東京都では、①毎年約200人の英語教員を3カ月間ほど海外の大学に派遣する、②週に4日程度、学校に常駐する外国人教師を新たに100人程度迎える、といった対策をしているが、3カ月間で英語ができるようになるはずもなく、また外国人教師を増やしたところで彼らに言語的教育的素養がなければ意味がない。単に無為無策ではないですよというエクスキューズにすぎない。そうではなくて、継続的な英語教師への研修として外国人教師を配置したほうがいいように思う。もっとも、そんな財政負担になるような話ではなく、休みの日に英会話学校へ通えば済む話で、助成金を出せばよい。

これは英語教師にのみ課されるものではない。社会科教師なら歴史検定や地理検定、数学教師なら数学検定、国語教師なら漢字検定や読解力検定など、「職務を遂行するのに必要十分な基準」をクリアすることを求め、一度合格しても3~5年に一度程度でそのレベルを維持できているかを問えばよい。これは決して厳しいことではない。保険屋がファイナンシャル・プランナーを、不動産屋が宅地建物取引士を取るのと同じ理屈である。それがプロというものではなかろうか。学生時代に教職の授業を受けて試験に通ったらおしまいというほうがおかしい。ペーパー・ドライバーのタクシーやペーパー・ドクターの医療ほど怖いものはない。

資格という客観的基準は、職業に就いてから必要なものであり、職業に就くための通過門・儀礼門ではないはずである。すべての科目は時代と検証とともに内容が変化していく。昔取った杵柄ではなく、最新の情報で教育が行なわれるよう、教師も日々勉強していかなくてはならないのではないだろうか。だって、それが仕事でしょ。