学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

教育基本法

昭和天皇の学ばれた教育勅語

昭和天皇の学ばれた教育勅語

 

日本の教育基本法は、明治維新の際に出された「教育勅語」が最初である(「教育勅語」自体に法的性格はない)。近代的な国家建設に当たり、「五箇条の御誓文」を出し、目指す国の在り方を示した。その後、抜本的な社会構造の変化を決定づけた地租改正だけでなく、学制改革も実施している。諸改革の中で軽視されがちではあるが、古来より国家建設の基本は教育にある。古くは秦の焚書坑儒から最近の独裁国家に至るまで、国家における教育とは国家機能の中枢にある。

教育基本法は、1947年3月31日に公布・施行され、新教育基本法は2006年12月22日に公布・施行された。教育基本法は、その性質上、「教育憲法」とも言われ、教育に関するさまざまな法令の運用や解釈の基準となる性格を持つ。第2章から第4章までは実施における定めであり、教育の目的及び理念は前文および第1章で述べられている。簡単に言えば、憲法で述べられている理想を達成するため、「個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育」を目指すとしている。

こうした教育基本法の改正は、賛否両論あり、反対派はこの改正を「復古主義」として批判をする。教育勅語と旧教育基本法、新教育基本法は連綿としたものではないが、その精神においては、やはり国家建設としての断続と連綿を感じる次第である。

教育の尾端に携わる者として、賛否を言う前に現行法を知る必要があるし、「復古」なのかどうかを知るためにも、その初端にある「教育勅語」の精神に触れてみたいとの思いから、この解説書を手にした。教育勅語は非常に抽象的であり、そこに述べられている精神自体に賛否両論が起きるとは思われないが、その抽象的なものをどのように具体的に落とし込み、憲法(国体)の体現者たる立憲制象徴天皇がどのようなものと受け止めておられたのかを知る手掛かりとなる本である。

 

現行の教育基本法

 第二条(教育の目標)

  1. 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
  2. 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
  3. 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
  4. 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  5. 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。