学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

不思議なイギリス

ふしぎなイギリス (講談社現代新書)

ふしぎなイギリス (講談社現代新書)

 

 大学院修士課程での僕の専攻は『イギリス政治』だった。当時の僕はなぜ人口6,500万余りの小さな島国が大英帝国を形成し、そして第二次世界大戦後まで世界に影響を与え続けられたのかを追及していた。その答えはイギリスの政治的感性にあると漠然と思い、サッチャー政権を追いかけた。

そうして研究を進めているうち、イギリスの持つ文化や言語も重要な要素であることに気付いた。おりしもジョゼフ・ナイが「ソフト・パワー」なる概念を展開し始めた頃である。英国の一番の貿易輸出品が『英語』であり、英語教師や英語教材が主な品目であると知った時の衝撃は、今も鮮明に覚えている。

本書は、そうしたソフト・パワーへ焦点を当てて、古くて新しいイギリスの姿を紹介している。王族や貴族を今に残す階級の国、ブレアの近代化路線(貴族院改革)、イギリス経済の復元力、激動化する連合王国スコットランド独立騒動)など、少し前からのイギリスの歩みを概観するのに手軽な本となっている。イギリスの議会議場はなぜ狭いのか、民主主義を育てたイギリスの人の金銭感覚など、時折はさまれるコラムもやわらかい話題で閑話休題にちょうどよい。

 

*追記 「人口7,000余りの小さな島国」を「6,500万余りの小さな島国」と修正しました。(2015.08.15, 21:05)