学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

東京都知事選告示前

7月11日、エネルギー閣外相のアンドレア・レッドサム女史が保守党党首選を辞退したため、テリーザ・メイ内相が保守党の党首となることが決まった。これを受け、キャメロン首相は7月13日に首相を辞任し、同日、メイが首相に就任する。英国には議会での首相指名がないから、バッキンガム宮殿でエリザベス女王が現職の首相の辞任を受理すると同時に次期首相の推薦(庶民院で過半数の支持を得られる人を推薦する慣習)を受け、次期首相候補を宮殿に招いて首相に任命することになる。9月9日まで結果が持ち越されず、このような結果になったのは、レッドサム女史の舌禍に拠る。あっけない幕引きであった。サッチャー女史以来、26年ぶりの女性首相の誕生である。

さて、彼の国のリーダー選びが一段落したところで、僕の住む東京都ではリーダー選びが本格化することになる。まだ告示前ではあるが、宇都宮健児氏、小池百合子氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏などの名前が挙がっている。他にも候補表明をしている人もいるが、僕が気になる人のみを取り上げた。宇都宮健児氏は100万票を持つ男と呼ばれているが、その再挑戦となる。

保守分裂選挙となる増田氏と小池氏であるが、僕はここが一番気になっている。というのも、両者ともにイメージが先行しているように感じているからだ。

小池氏は細川護煕氏の日本新党から政治生活をスタートし、日本新党解党とともに新進党に移籍して小沢氏の側近となり、新進党解党とともに小沢氏の自由党に移籍して小渕内閣森内閣政務次官を務める。その後は小沢氏と決別して保守党に参加し、さらには保守党を離脱して保守クラブに入り、自民党に入党し、小泉政権で小泉氏の側近として環境大臣に、第一次安倍内閣防衛大臣に就任した。現在は安倍氏との仲も悪い。

政治家としては「コウモリ政治家」で権力者のそばに寄っていく印象がある。しかし、これの意味するところは非常にしたたかでしぶといということで、政治家としての面の皮の厚さがあるとともに、自らの政策を通す手段として権力者に寄り添ってきたとも言える。都知事選挙の公約を見ても、もっともはっきりと政策が見えやすいと思う。劇場型の政治家として、見せ方や構図の設定、戦略の立て方が非常に上手だと思う。

一方の増田氏は、「896の自治体が消滅する」というフレーズで名をあげた「増田レポート」で有名な人である。元岩手県知事、元総務大臣である。しかし、県知事時代には知事外交を盛んにしたが、県内主要港湾からの輸出額がゼロの年もあり問題視された。また、公共事業を漫然と拡大し赤字を招き、就任前の7000億円から12年間で1兆4000億円にまで赤字を拡大させている。知事後半では職員のリストラを敢行し、公共事業を縮小するなど赤字対策へ奔走はした。また、2011年10月、日韓グリッド接続構想を提唱し、韓国との電力融通構想を推し進めた。

総務大臣として地方分権を推し進め、東京一極集中を悪として地方への拡散を主張してきた人でもある。財政の潤沢な東京都の知事になった場合、財政赤字によって縮小へを余儀なくされた公共事業は、東京でなら際限なく行われるのか、あるいは東京から地方へという流れを主張してきた過去の経緯を考えた場合、東京の発展はどうなるのか、このあたりは不鮮明である。一度、政治資金でトラブルもしたことがあるが、地方自治地方自治体についてはプロである。

野党統一候補として鳥越俊太郎氏が出馬表明したが、民進党都議連は元経済産業省官僚の古賀茂明氏を一度は擁立したわけで、保守分裂に加えて野党分裂となるかどうかも焦点である。いづれにせよ、4度のガン手術を経験した鳥越俊太郎氏には、76才という年齢も考えれば健康不安がつきまとうし、古賀氏は過去のテレビにおける頑迷さは大人の対応としてどうかと疑問に思った記憶がある。

まだ告示まで時間があるから、マスコミで流される情報やイメージだけでなく、各候補についてWikipediaなどでしっかりと調べていく必要があるだろう。この投稿が読者の調べるきっかけとなれば幸いである。