学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

国会議員の育休はダメ

国会議員が育休を取るかどうかで議論があるので、一石を投じてみたい。

僕は国会議員が育休を取ることには反対である。その理由は2つある。

国会議員は被雇用者ではない(労働基準法も適用されない)

有権者の代表人(代議士)である

まず、国会議員は被雇用者ではない。それは、国会議員労働基準法が適用されないことからも明らかであるが、国会議員は一人一人が自らの言動に責任を持つ「経営者」なのである。話を簡略化するために民間の事例で考えれば、最終責任者で決裁権を持つ社長が育休で半年間お休みしたら、その会社はどうなるであろうか。もし、どうしてもというならば、その社長は最終責任および決裁権を誰かに移譲して社長職を退かなければならないだろう。

話はそれるが、女性管理職の問題も同様である。管理職ということは、社長業を一部分業して担うことであり、やはり穴をあけられると会社業務に支障を生む。これは、物理的肉体的に女性のみが労働不可能な状態になることからする区別であって、差別には当たらない。女性の肉体的理由に対する配慮である。もちろん、女性が管理職になってはいけないわけではないが、それぞれ個人レベルでも会社レベルでも事情があるのだろうから、数値目標の設定とか義務化は不適切である。

話を戻すが、国会議員も社長の場合と同様である。育休の間、有権者の代議士として国の決断に関わる会議に欠席し、その職分を果たせないなら、辞職すればよい。そもそも、衆議院議員なら最大で4年、参議院議員なら6年という任期のものであるから、いわゆる育休を取る「勤め人」とは違う。育休の間、有権者を代表して行動できないのであれば、代表するという職分のための議員である以上、辞職するのが最も妥当なところである。

したがって、もし育休して議会審議に問題がないならば、その議席分は不要ということである。その議員が代表する有権者の意思は無視してもよいということになる。これでは代議制民主主義の崩壊である。

議員が複数いるから分かりづらくなるのだが、議員はあくまでも個人で議員である。中小企業の社長や芸能人と同じである。ある仕事を請け負って育休に入りますから待っていてください、契約解除はできないので他の業者に頼むこともできません、それでも規定通りの料金はいただきますし、延滞料金も発生しません、では通らないことは自明である。

また、総理大臣は議員でもある。まぁ、年齢的にないことかもしれないが、総理大臣が育休を取ることが可能と思う人はまずいないだろう。もし、総理大臣が育休を取るなら、やはり辞任するしかないだろうし、総理大臣がいなくても閣議が進むなら、総理大臣は不要である。もっとも、各大臣は総理大臣が任命権者であり、総理大臣の分身として存在しているわけだから、総理大臣無しならばすべての大臣は存在できない(内閣の一致の原則)。

そして、総理大臣がその職責ゆえに育休を取れないとするならば、国会議員もまた取れないと解釈するのが論理的だ。なぜなら、行政府と立法府はともに対等な立場であり、行政府の執政官はダメだけど立法府の議員はOKというような理屈は成り立たない。そのような理屈を認めれば、立法府は国民からの負託という点において、行政府より下ということになる。

だから、僕は国会議員のみならず、知事や市長、地方議会の議員が育休を取ることにも反対である。