学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

人文諸科学を学べ

最近、IoTやAIについて学ぶ機会があり、なんとなく自分の中でイメージが固まってきたので、今回の記事ではそれを記しておきたい。

今、世界は第4次産業革命の中にいるとされている。第4次産業革命という言葉自体は、ドイツが2012年から打ち出している技術戦略「インダストリー4.0」を日本語化したのが始まりであるが、その前に、第4次産業革命に至る道のりを簡単に俯瞰しておこう。

第1次産業革命では「蒸気」という新しい動力が出現した。続く第2次産業革命では「電気」と「石油」による大量生産が実現し、第3次革命では「コンピューター」が登場して自動化が進んだとされる。そして、第4次革命ではさまざまなモノがインターネットに繋がり、それを「AI」が制御するようになると言われている。

実際、Google Homeや自動運転車などの実用的な実現に触れ始めており、第4次産業革命の舳先にいることを実感できる。しかし、第1次~第3次までは「人」が中心にいたこと、そして新たな動力を得て新たな産業が生まれたという特徴を持っている。機関車はそれ以前になかった。自動車も電車もそれ以前にはなかった。コンピュータはそれ以前にはなかった。つまり、開発という意味での「ものづくり」は継続してあり続けたのである。

しかし、第4次産業革命では、新たに何かを生み出してはいない。第1次~第3次までで「人」が担っていた「作業」を「AI」が取って代わったに過ぎない。既に発明されている自動車や機械を、既に発明されているコンピュータが制御するだけなのである。物質的に新しいものが登場していない。登場したのはソフトウェアなのである。人間の頭脳に相当するプログラムなのだ。第1次~第3次までは操作する制御装置として「人」が必要であった。

ここで、第4次産業革命では「人」が不要になるという議論が出てくる。確かに、たとえば自動運転車が日常になれば、タクシーやバス、果ては電車の運転士も不要になる。あちらこちらで「人不足」を解消する処方箋が、一方で失業者を大量に生み出すことにも繋がってくる。なんとも皮肉なことである。しかし、失業にならず、ますます需要が高まる人材も一方で存在する。

それは、AIに出来ないことをするということに尽きる。すなわち、交渉・妥協を含むコミュニケーション術を持つ人材である。確かにAIは最適解を導き出すだろうが、人間社会はそれほど合理的ではない。現実的な施策としては、次善の策を採ることもあるだろうし、相手との交渉によって妥協をすることも必要である。また、ある価値観によって判断や決断をする必要も出てくる。これらは今のところ、AIが出来る領域ではない。

したがって、コミュニケーション術や確固とした哲学・思想を持っていることが必要である。これが21世紀に人間が担う領域となろう。心理学や交渉術、レトリック、哲学や思想などの人文科学に長けていることが重要な時代になったと言える。「IT土方」なる言葉は、ITに携わることが保守・開発の技術屋に過ぎないというニュアンスを含んでいる。今後、いわゆるホワイト・カラーとして生きるためには、人文諸科学の能力を身に付けなければならないだろう。