学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

中国の変調

2016年8月16日配信の日経記事だが、これを読んで僕は記事にあることとは違うことを感じた。『円高や株安で海外の投資家や富裕層が購入していた「億ション」の動きが鈍っている』とのことだが、本文では台湾人が挙げられているが、これは主に中国人のことであろうと思われる。いわゆる「爆買い」は中国人によるものがメインだったはずである。

2015年11月30日、IMFは中国の通貨「元」を2016年10月からSDR(特別通貨引き出し権)に採用することを決めた。SDRとは、危機に直面したIMF加盟国が仮想の準備通貨であるSDRと引き換えに他の加盟国からドル・ポンド・ユーロ・円という通貨バスケットにある通貨を融通してもらう仕組みであるが、ここにポンドと円を上回る比率で中国の「元」が今年10月から加わることとなった。

SDRの条件として、中国はドルペッグを解消し、さらには通貨の自由性を確保しなければならない。つまり、市場における変動を認めることになる。ドルペッグによって価値を引き上げられていた元がそのリンクを失えば、自由市場における元の価値は実際の価値まで下落することになるだろう。それは大きな下落幅となることは間違いない。

だから、中国の富裕層は海外に資産を持ち出しているのだ。政府の上層部も海外に資産を買う。そうして、中国経済が暴落すれば、海外に移住して不動産を売り払い、そのお金でその後を成り立たせようというのである。だから、家電や雑貨を爆買いする一般的な中国人ではなく、不動産を買っている中国人に注目をすべきなのだ。動産では政府に取り上げられるかもしれず、不動産に投資しているのである。

しかし、なんとしても元をSDRに加えたかった中国政府は、資金流出にストップをかけることが出来ない。ストップをかければ、それはSDR加盟条件である自由取引に待ったをかけることになるからだ。それを知っているからこそ、中国の富裕層や政府上層部は今こそ億ションでもなんでも買い入れてきたのである。中国人の爆買いにも、ちゃんと背景があるのである。庶民の爆買いも同じ路線だが、金額の過多により、より注目するべきものがどちらかは明白であろう。

その爆買いが止まった。中国政府が資産流出に耐えきれず、ストップをかけたと考えられる。10月のSDR適用後を待つことなく、混乱が始まったと見ることも出来る。僕は10月以降に徐々に西側の金融ルールに組み込まれ、資金不足の中国に欧米資本が入り込み、経済支配をするだろうと思っていたが、その前に大混乱が起きるかもしれない。

中国経済バブル崩壊、経済破綻はずいぶんと前から言われ続けてきたが、習近平氏の指導力不足と外交下手とも相まって、いよいよ本格的なカウントダウンに入った感がある。中国市場の行方に要注意・要注目である。