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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

政治への信託

時事論考 政治論考

世界における最近の選挙関連を見ていると、政治に対する信託の危機にあると思える。英国におけるEU離脱国民投票や米大統領選のトランプ氏優勢、東京都知事選挙における小池女史の躍進など、既存の支配階級に対する国民の「NO!」は世界的現象のように見える。支配階級たるエスタブリッシュメントへの不信任表明である。

だからこそ、「抗議のための投票と支持」が実現してしまうと、国民の間には動揺が起こる。英国でのEU離脱が決定されてからの国民の狼狽ぶりは、既存の支配階級への不信任ではあるけれど、それでも支配階級による統治のほうがマシと感じている国民の多いことを示した。熱いお灸を据えたつもりが火傷をしてしまったという後悔である。これはおそらく、トランプ米大統領が実現したときにも、アメリカでも同様の反応が起こるだろうと予測できる。

既存の支配階級に満足は出来ないけれども、それに代わりうる選択肢が見つからないのである。だから仕方なしに今の支配階級に支配を委ねるしかない。現今の日本における自民党支持と同じで、自民党に対する積極的支持では決してないのである。これは支配階級が国民の苦境を理解していない、国民の現状を把握し切れていないとの思いからであろう。統治者と被治者との隔絶である。

今、田中角栄に関する書籍が書店に溢れているが、手法は褒められたものではないけれども、国民のことを理解してくれていた政治家への郷愁があるからだと思う。「今は清廉潔白でもないし国民のことも理解していない政治家が増えたので、手詰まりだ」という国民の不満とも受け取れる。民主党政権誕生時の時には、民主党自民党に代わりうる政党として、国民のことを理解してくれているとの期待があったのだろう。それが裏切られた今、国民は希望が持てないでいる。

これは世界的な現象である。伝統的な支配階級が人々の声を吸い上げ切れていない。これが従来の統治構造にも疑問を投げかけている。トルコのクーデターやスコットランドの独立、イタリア・オランダ・スペイン・フランスでの大衆主義をあおる政党の台頭など、近代国家を支えてきた「社会契約」に綻びが生じている証左は枚挙にいとまがない。反グローバリズムとしての内向きなナショナリズム保護貿易、そして抗議のために拡散した支持、そして権力の分散化は、世界的現象である。

近代国民国家が挑戦を受けている。我々が生きる時代は、そうした時代である。20世紀のインフレの時代から21世紀のデフレの時代へ。経済体制だけでなく政治体制にも変革が訪れている。