学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

テクノロジーの波

僕が生きているうちだとしても、現役を引退する頃の話だろうと思っていたが、イギリスの新聞が以下のような声明を発表した

英紙インデペンデントは12日、紙の新聞の発行を3月で停止すると発表した。その後は、インターネットによるデジタル報道に特化するという。同紙を発行するESIメディアは、「我々は全国紙として初めて、デジタル専門に移行する。将来はデジタルにある」との声明を出した。最後の新聞の発行は3月26日という。インデペンデント紙は1986年創刊。1989年のピーク時には発行部数が40万部を超えていたが、昨年12月には5万6,000部にまで落ち込んだ。一方、デジタル部門は過去1年間、月33%の伸びを記録し、世界で7,000万人が読んでいるという。

30年足らずで40万部から5万6,000部にまで落ち込んだという事実もさることながら、ピーク時で40万部が昨年一年間で7,000万という事実にも驚かされる。記者の負担はほとんどない。ペーパーだろうとデジタルだろうと、入稿はパソコンなのだろうから、記者にとってはあまり関わりのないところだろう。一方で、製紙業や印刷業にとっては大きな打撃となっているだろう。今後は新聞を広げるのではなく、タブレット片手にというスタイルが増えるのだろうか。

タブレットといえば、朝日新聞の報道によると、今年1月の時点で、都道府県、市区町村の全1,788議会のうち、29市町村議会が公式にタブレット端末を採用しており、今後の検討としているところも多いようだ。予算案や決算についてはペーパーというところが主流のようだが、採決もタブレットを通じてなされ、その透明性が高まっている。いろいろな処理も的確に迅速に自動で行われ、人員の手間も減る。製紙業や印刷業と同じく、ここでも「機械が仕事を奪う」現象が起きている。

生まれた時から、あるいは子どもの時からデジタル環境に身を置く「デジタル・ネイティブ」がこれからますます社会に出てきて、このテクノロジーの波は止まるところを知らないであろうとは思っていたが、そのスピードは想像を超えて速い。テクノロジーの変化は生活を変える。生活の変化は人々の意識を変える。人々の意識の変化は価値観を変える。新しい時代はもうすぐそこに来ている。

僕自身、KindlePaper、Androidタブレットと渡り歩き、今はWindowsタブレットを利用している。英語の新聞・雑誌・書籍を読みたくて、トータルで安い電子系を利用し始め、やがてはパソコンでの簡単な作業もしたくてWindowsタブレットにするまでデジタルについては最先端を自負してきたが、この3年間だけでもこの変化である。この変化の速さに根を上げ、しばらくは技術が落ち着くまで僕も落ち着いて様子見をしようかと感じていた矢先のニュースである。

時代の変化はあまりにも速い。うかうかとはしていられない。