学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

雑誌について

僕は雑誌を読むことを推奨している。時事に精通することは教養人としてのみならず社会人としても必須のことと思うからである。身の回りのことにしか目の行き届かない人は、それだけその人の世界が狭くなることを意味する。自分の周りにある出来事は、その外周部分と密接に連関している。だから、地域のこと、日本のこと、世界のことへと視座を拡げてこそ、ミクロの自分の身の回りのことも見えてくるのだと思っている。

地域のことは県や市の広報、日本や世界のことは、一般に流通している雑誌で賄うのがよい。書籍はある特定の話題を深く掘り下げる際に有用である。また、速報性において新聞・テレビなどの報道機関に勝るものはない。ネットでは、報道機関に拠らない個人発信のものは、信憑性が疑わしい場合が多い。たとえば、Wikipediaの信憑性は、出版社が出版責任を、編纂者が文責を明らかにしているものに遠く及ばない。

雑誌は、書籍ほど詳しくないが、新聞よりは詳報性がある。時折、時事性の強いものを扱う書籍があるが、たいていの場合、書籍となって出回る頃には修正の必要な古い情報である。また、新聞は毎日の膨大な情報量により、一つの事象がその中に埋もれてしまったり、続報の連関性が薄まったりして、全体的な把握・理解をするには苦労や困難を伴う。この書籍と新聞の間に位置するものが雑誌である。

雑誌は概括をすることに優れており、図表やグラフなどを用いて理解を促してくれる優れものである。一つか二つの特集を組み、それを説明してくれるのだから、時事問題の初心者(つまりは、ほとんどの人々)にとっては、これほど役立つものはないように思う。マイナンバーにしろ、マイナス金利にしろ、僕も含めた世の多くの人々は時事問題の初心者なのだから。

自分の専門分野・領域における雑誌は、その分野・領域の最先端情報にアクセスするものとして欠かせないし、僕の場合で言えば、専門の「比較政治」のみならず「政治学一般」に対するアンテナとなっている。そして、こうした専門雑誌は探すのに問題がなかろう。問題は、社会時事一般における雑誌の選定である。この社会時事一般を扱う雑誌は「ビジネス誌」と呼ばれているカテゴリーに属する。もともとは経済紙なのであるが、政治を含み、閑話休題として文化を含むことも多い。

このカテゴリーでオススメの雑誌は、「週刊東洋経済」、「週刊ダイヤモンド」、「日経ビジネス」である。これらは「三大経済誌」と呼ばれることもある。他にも社長・経営者・部長クラスの仕事術を扱う「プレジデント」や、投資を扱う「ダイヤモンドZai」などもあるが、そうした重点ポイントを持たず、広く一般的に情報を扱ってくれているのが、冒頭の「三大経済誌」である。ただし、ビジネス街の一部の書店を除いて「日経ビジネス」は基本的に定期購読だけなので、「週刊東洋経済」、「週刊ダイヤモンド」あたりが手を出しやすい。

日本で最も古く、石橋湛山を輩出した「週刊東洋経済」はリベラルな論調で、「会社四季報」で有名な東洋経済新報社が担当している。「弱者」とか「格差」について扱う記事が多いリベラル誌だが、政策提言をするほどではない。もう一方の「週刊ダイヤモンド」はやや保守的であるが、話題の人や著名人が記事やコラムを担当することもあり、エンタメ色もある。また、視点は個人に置かれているようで、個人の技能や能力を向上させる記事を提供している。

雑誌は定期購読をするとかなりお得だが、毎週書店で特集を見て気になったものを手にするやり方もある。なにはともあれ、雑誌を読むという習慣を手にすることはよいことだろう。