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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

丙申 新春

言葉論考

ブログをご覧のみなさま、新年あけましておめでとうございます。今年は丙申(ひのえさる)です。今年が申年と知っていても、丙であることを知っている人は少ないかもしれませんね。「干支(えと)」という場合、「十干(じっかん)」と「十二支(じゅうにし)」の組み合わせなのですが、「十二支」は今も生きているものの、「十干」は日常からは消えてしまったようです。

「十干」とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸のことで、僕が生まれるよりも前の時代の学校の通信簿には、「優・良・可・もう少し」ではなく、「甲乙丙丁」とつけられていたんですよ。「甲乙つけがたい」という言葉なら、耳にしたこともあるかと思いますが、「優か良か、どちらが優れていてどちらが劣っているか、判断が難しい」というような意味で使います。

歴史に関心のある人なら、「壬申の乱」、「乙巳の変」、「戊辰戦争」、「甲午農民戦争」とか覚えていることと思いますが、これは現代風に言えば「2016年の乱」というような記述なんですね。60年に一度しか同じ年は廻ってこないので、一人の人生の長さからして、この表現で問題なかったわけです。赤いチャンチャンコを着て「還暦」をお祝いしますが、「暦が還ってくる」のが60年周期なわけで、だから、60歳がお祝いなんですね。

また、野球で有名な「甲子園」も、竣工したのが甲子の年(1924年)で、かつ、甲は十干の最初の字、子は十二支の最初の字という縁起の良さがあるから、「甲子園」と名付けられたと言います。

ところで、「干支」は本来的には「かんし」と読むべきですよね。これは、陰陽師で有名な陰陽五行説のせいなんです。つまり、日本独特の用法です。五行説では、木・火・土・金・水の5つに世界を分類して理解します。そして、陰陽を交え、たとえば「木」に「兄(陽)」と「弟(陰)」を設定して10通りにし、「十干」に当てはめ、「甲」を「木の兄」、「乙」を「木の弟」としました。この「兄」は「え」、弟は「と」と読みます。この「兄弟(えと)」から「干支」もそう読むようになりました。ちなみに、のちに天智天皇になった「中大兄皇子」の「兄」は「え」と読んでいますね。「中大兄皇子」は、「2番目の兄」という意味で、「大」は尊敬語です。「2番目のお兄様」となるので、実は名前ではないんです。

話を元に戻して、だから、今年の「丙申」は、「火の兄のサル」なんです。「丙」を「ひのえ」と読むのは、実は漢字に由来するものではなく、文化に由来するものだったんですね。冒頭で「ひのえさる」とフリガナを振った時に疑問を抱いた人は、なかなかに筋があります。そして、馴染みのない言葉だと思っていたものが、還暦や甲子園などの身近に存在していると知り、最後にはその由来までいって「へぇー」と思ってもらえたなら、この投稿の意義がありました。

政治・経済・文化を中心に、民主主義を疑うという視点から、そして日常の当たり前を疑うという姿勢で、「へぇー」「ふぅ~ん」と思ってもらえるような投稿をするよう、2016年も頑張ってまいりますので、みなさん、どうぞ温かなご声援をよろしくお願いします。