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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

迷走する日本

時事論考

こんなニュースが飛び込んできた。今年は就職活動時期を後ろ倒しして8月から筆記面接試験などの選考活動を行なうとしてきたが、企業の足並みは乱れ、大企業の混乱は中小企業の採用活動に大きな影響を与え、現場は混乱した。来年は再び日程変更をし、6月に前倒しするという。それでいて、説明会などの開始時期は今年と同じ3月に設定しているという。この理由は、多くの企業がすでに会場を予約しているからというものだ。

したがって、今年の就活生は説明会が3月から7月の5ヶ月間、選考が8月と9月の2ヶ月間だったのが、来年は説明会が3月から5月の3か月間、選考が6月から9月の4ヶ月間となる。学事日程や卒論を考えて学生主体の改革と言っていたのに、学生主体はどこへやら。企業の都合だけでいろいろと変動している。学生は振り回されているだけである。

人口減社会を迎えて、労働人口が減る中、売り手市場となって学生側が有利になると言われているが、けっしてそんなことはない。というのも、従来に比べると、女性の社会進出、高齢リタイア組の再就職などが明らかに増えており、仮に募集数(労働力として必要とされる数)が一定とすれば、供給側の窓口が学生だけではなく、主婦層や高齢層に広がっており、また不況であるが故により悪い条件でも引き受ける労働者がいる限り、売り手市場にはならない(ブラック企業が入り込む余地がここにある)。

くわえて、団塊ジュニアの世代はフリーターの数が深刻である。把握しきれるものではないが、ある民間企業の概算で35歳~54歳の非正規雇用の人たちが270万人いるという。これに同じ年齢層のニートや若年層の非正規雇用の人たちやニートを加えれば、ひどい現況が浮かび上がる。大卒の就職率は、1992年をピークに減少し続け、2003年には55%前後にまで落ち込んでいる。その後は再び上昇するも2010年には60%前後に落ち込み、2015年度は72.6%である。34歳~45歳が就職しようとしていた10年間は、本人たちの努力ではいかんともしがたい状況にあり、時には2人に1人が就職できなかったのである。

さらに、昨今の議論では、減少する労働市場に移民を投入しようという意見もあるが、これも、より悪い条件で働き手を確保しようとする意図であろう。そうではなく一人びとりの労働者の可処分所得を増やし、消費をしてもらうようにすることこそが必要とされている。待遇を落とし、労働者の購買欲を殺ぎ、それが再び待遇改悪へと繋がっている連環を断ち切る必要がある。非正規雇用の労働者が若年層で180万人、中年層で270万人で、合計450万人。ここに若年ニート60万人、把握しきれていない中年ニートを含めた統計の誤差を勘案すれば、6500万人の労働人口の実に1割に近くなる。

だから、移民の必要性などないのである。それに、欧州の現況を見れば、移民・難民の引き受けが難しいことを示している。ドイツなど欧州では難民施設への放火が相次ぎ、また日本でもトルコの選挙をめぐってトルコ人とクルド人の流血を伴う衝突が都内で起きた。宗教問題や民族問題を引き起こしてしまう。安易な解決策に依っては、就職活動時期と同じく、迷走するだけである。

今の日本にとっては、政官財のすべてにおいて、10年、30年、50年を見通すような鳥瞰図を描ける人材が必要とされている。これには、緻密な計算だけでなく、豊かな想像力を必要とする。目先に走る小手先の場当たり的な処方箋では失敗するだけであろう。既定の路線は崩壊し、時代の節目における新たな展望を描くときである。だからこそ、当ブログでは「考える」ということを重視し、それに沿って記事を投稿してきたつもりである。「考える」方策の例を示し、そこから触発されて人材が育つことを期待している。