学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

消えた祭日

今日は「秋分の日」。これは本来は皇室祭祀の一つ、「秋季皇霊祭」である。皇室祭祀由来の休日は他に、「春分の日」が「春季皇霊祭」、「昭和の日」(4月29日)が「昭和節」、「文化の日」(11月3日)が「明治節」、「勤労感謝の日」(11月23日)が「新嘗祭」である。

1948年(昭和23年)7月20日に「国民の祝日に関する法律」が公布・即日施行されたときに、これらの「祭日」が消えた。したがって、現在は日本には法律上は「祭日」が存在せず、すべて「祝日」か「休日」である。もっとも、日常生活の中では「祝祭日」という言い方は残っており、地域によっては地元の神社のお祭りの日を「祭日」と呼んでいることもある。

天長節というのは天皇誕生日のことであり、先帝3代を祭る慣習がある。明治期の天長節明治節として、昭和期の天長節は昭和節として、それぞれ「文化の日」と「昭和の日」で残っているのに、8月31日の大正天皇の誕生日(大正節)だけが残っていないのが気になると言えば気になる。8月はお盆の長期休暇があり、休日を増やすことにビジネス上の問題があったのであろうか。

しかし、2016年から適用する8月11日の「山の日」の新設は、その8月である。ほぼお盆の時期と重なるので、あまり意味はない。あまり意味がないから、8月に新設しても問題がなかったのだろうか。

ところで、我が国の祝日・休日を以下に理由とともに列挙しよう。「理由とともに」が意図するところである。祝日・休日の意味を考えたことはありますか?

元日:年の初めを祝う。
成人の日:大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます。
建国記念の日:建国を偲び、国を愛する心を養う。
春分の日:自然をたたえ、生物を慈しむ。
昭和の日:激動の日々を経て、復興を遂げた昭和時代を顧み、国の将来に思いを致す。
憲法記念日日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。
みどりの日:自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む。
こどもの日:こどもの人格を重んじ、こどもの幸福を図るとともに、母に感謝する。
海の日:海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。
山の日:山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。
敬老の日:多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日:祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ。
体育の日:スポーツに親しみ、健康な心身を培う。
文化の日:自由と平和を愛し、文化を勧める。
勤労感謝の日:勤労を尊び、生産を祝い、国民互いに感謝しあう。
天皇誕生日天皇の誕生日を祝う。

こうしてみると、秋分の日が「祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ」という理由なのも納得できる。なぜ秋分の日に祖先を敬うのか、亡くなった人を偲ぶのか、といえば、秋季皇霊祭だからである。また、五穀豊穣を祈る収穫祭である「新嘗祭」が「勤労感謝の日」であることも、日本人が農耕民族であることを表している。暦には二十四節気や七十二候があるが、花鳥風月や風物詩を楽しむためにも、そうした事項が記載されているカレンダーを用意するのもいいだろう。

秋分の日を迎え、来年のカレンダーや手帳が売り出された店頭を見て、ふと、こんなことを考えた。