学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

安保関連法案の論点整理

今般の安全保障関連法案がなにか、不明な人も多いことだろう。もっとも、こんなに国民的議論になっている安全保障関連法案を知らない人が多いのは不思議でもある。賛成派も反対派も何に賛成し、反対しているのか、不明なままに意思表示をしているような感すらある。

今般の安全保障関連法案は、11の法律に関するもの(一部改正を含む)である。新法としては、「国際平和支援法」で、武力行使を除く他国軍隊の後方支援を自衛隊が行なうことを可能にする法律である。これが集団的自衛権との関連で問題にされている。残る10の法律案(一部改正を含む)は、一括して「平和安全法制整備法」と呼ばれ、その内訳は、「自衛隊法」「PKO協力法」「重要影響事態安全確保法」「船舶検査活動法」「武力攻撃事態対処法」「米軍等行動関連措置法」「特定公共施設利用法」「海上輸送規制法」「捕虜取扱法」「国家安全保障会議設置法」である。

基本を確認したところで、議論の整理をすると、論点は以下の4点である。①国際情勢、②集団的自衛権と個別的自衛権、③日本の安全、④法律案の提案の仕方である。国会での論争やテレビなどでの国会議員・コメンテーターなどの議論を見ていたら、それぞれが自分がもっとも大切と思っていることを言いたい放題なだけで、同じ議論の俎上にいないので、そもそも議論が成立していない。国会での審議や質疑が不十分とか、議論が深まっていないのも、与野党ともに議論がヘタクソだからだ。

まずは、今回の背景にある①国際情勢の変化をどう捉えるかということで、共通の認識を持つべきである。これがズレたままで具体論を戦わせても意味がない。そして、集団的自衛権と個別的自衛権は総論的なもので、抽象論である。ここに個別具体的な事例をもって答えていくことは不毛でしかない。一方で、自衛隊員を含む日本人の安全などの③日本の安全という具体的な問題がある。つまり、②の総論と③の各論は同じ問題ではあるが、議論をするときに両者が混在した議論は合意に達するはずもない。最後に、11の法律案を一括して出す手続きの手法問題がある。野党も11のすべてに反対しているわけではないが、一括されてしまえば一括して反対せざるを得ないというわけだ。

あれこれ言われているけれども、結局はこの4点に絞られるように思う。ここではその一つ一つについて論じることは避けるけれども、それぞれについて一つ以上の記事が書けるほどに中身は豊富だ。このブログの読者も、自分の思いや主張を4つにカテゴリー分けをして、じっくりと考えてほしいと思う。そして、次の選挙に向けての判断材料にしてほしい。