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学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

ダウントン・アビー

僕の大好きなイギリスのドラマ『ダウントン・アビー』をめぐって、「シネマ・トゥディ」が次のように報じた。

最終シーズンを迎えるテレビドラマ「ダウントン・アビー」は、エリザベス女王をもとりこにしているとPeopleが報じた。

 「アット・ホーム・ウィズ・ザ・クイーン」の著者ブライアン・ホーイによると、女王の楽しみ方は人とは少し違っているとのこと。89歳の女王はロケ地となっているハイクレア城を知り尽くしているほか、歴史にも詳しいため、間違い探しをするのが好きらしい。

 「女王陛下はミスを見つけるのが大好きなんです。大体は正しく描写されていますが、あるエピソードでは、若い将校が彼の存命中には存在し得なかった勲章 を身に着けていることに気付かれました。彼は第1次世界大戦の兵士だったのですが、第2次世界大戦の勲章を着けていたんです」とホーイはPeopleにコ メントしている。

 おもしろい楽しみ方をするものだ。日本ではめっきりと少なくなった時代劇でも言えることだが、時代考証は非常に難しい。ましてや、今回のように勲章を授ける側からの指摘は、なかなか外部にとっては難しい。

ダウントン・アビー』は、19世紀後半~20世紀半ばまでにかけてのイギリス貴族の有り様を描いた作品で、イギリスで今秋に放映されるシーズン6をもって最終回となる予定の大人気番組である。僕はシーズン3までを見た。イギリスの階級英語を含め、文化的思想的な「古き良き時代」のイギリスがそこにある。『ローマの休日』や『マイ・フェア・レディ』、『ハリー・ポッター』でもそうだったが、イギリス文化を知るには絶好の教材である。

"Are you OK?"(大丈夫ですか?)とアメリカ人が問えば、"Am I what?"(私が何ですって?)と問い返すイギリスの老貴婦人。イギリス英語には"OK"がない。アメリカの第7代大統領のAndrew Jackson(任期1829-1837)が、相当英語のスペルに弱く、書類を承認するときに、"All Correct"と書くべきところ、間違えて「OK」と書いたのが最初という説もあるくらいだが、"OK"はアメリカ英語である。

 最近の日本には時代劇が少ない。あるいは時代劇風なものはあっても時代劇はない。言葉遣いは完全なる現代語で、社会描写でも、男女平等ないし女性優位で描かれる「まがいモノ」である。現代の尺度で見れば悪いことかもしれないが、歴史を見るのに現代の尺度を持ち込んではならない。でなければ、江戸幕府を開いた徳川家康は大虐殺者である。歴史を歪めてしまうほどつまらないものはない。そこからリアリティが失われるからだ。良いも悪いも含めて、歴史なのである。そして、だからこそ歴史から学べる。

歴史から学ぶという意味では、日本の時代劇はその教材にはならない。あまりにも歪めてしまっている。悪いところを排除して、いいところだけを抽出して、さらには現代風のアレンジまでしてしまっては、それはもう「おとぎ話」か「童話」である。今から見れば都合の悪いことも、そのまま、ありのままに演じることで、我々の過去は我々に語りかけてくるのである。その語りかけを余計なフィルターで目隠ししてはならない。この意味でも、イギリスのドラマの存在は羨ましい。

ダウントン・アビー [DVD]

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