学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

矛盾だらけの人々

中国で抗日戦争勝利70周年を記念した行事が取り行われた。アチコチに突っ込みどころ満載で、なにからどう書けばよいやらという感じだ。まずは、記念撮影を見てもらいたい。

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真ん中に習近平国家主席夫妻が「鎮座」し、左にロシアのプーチン大統領、右に韓国の朴槿恵大統領が並んでいる。プーチン大統領のさらに左にいくと、潘基文国連事務総長がいる。ちなみに、国際刑事裁判所からジェノサイド容疑で逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領もいる。もっとも中国は国際刑事裁判所を認める条約を結んでいない。とはいえ、潘基文国連事務総長国連加盟国へ逮捕への協力を促した本人である。そして、彼を招待した中国は、国連の常任理事国である。

習近平国家主席中国共産党の正装である「人民服」であるが、彼の奥さんは赤いスーツである。もちろん、中国共産党カラーである。朴槿恵大統領のスーツは、古来、中国では皇帝にのみに認められた「黄色」。これは中国人から見たら、どんなふうに映ったのだろうか。それにしても黄色は目立つなぁ。北朝鮮もこれをどう見たのだろうか。

抗日戦争勝利70周年」というが、中華人民共和国の建国は66年前、大韓民国の建国は67年前である。ついでに言えばロシアは不戦条約を一方的に破って終戦間際に攻め込んできて北方領土を奪った国である。揃って「戦勝記念パレード」に出席した。どこが誰に抗戦して、誰がどこに勝ったのだろうか。

北朝鮮と韓国は休戦協定中で現在も戦争を続行しているところだが、北朝鮮の背後には中国が、韓国の背後にはアメリカがいる。中国の軍隊はいざとなれば北朝鮮を支援して韓国へ攻めてくる危険性もある。その観兵式に韓国大統領がいる。国連の事務方トップがいる。ちなみに、北朝鮮の使節は記念写真の左端2列目である。

日本の軍事大国化を懸念して猛反対を元気に繰り返す91才の村山元首相は、現地に着くなり体調を崩して式典にもパレードにも出席できず、中国で入院していた。村山元首相は平和を祈念しているというが、当の中国は平和のために軍事を増強し、軍事パレードを行なうと声明を出している。それを祝いに駆けつけているとは、村山元首相のオツムの心配をしてしまう。ついでに言えば、朝日新聞は軍事式典で平和を目指す中国を強調した記事を配信した。

中国におけるチベットやウィグルなどの人権弾圧は国連でも問題になっている。その弾圧は軍事パレードを行なった人民解放軍が担っている。それを観覧している笑顔の国連事務総長がいる。ちなみに、潘基文国連事務総長は、軍事パレード観覧後の3日午後、中国の習近平国家主席人民大会堂で会談し、「非常に素晴らしかった。中国人民の平和を守ろうとの願いが十分に示されていた」と絶賛したという。

僕はね、立場や主義主張は人それぞれ、なんでもいいとすら思っているが、一貫性を持ってほしいと願う。分裂症ではないか、と疑いを持たせないでほしい。胡散臭く思えて、その人のすべての主張が疑わしいものになる。あるいは、自らの立場での言動がどのような意味を持つのか考えてほしいと思う。

矛盾だらけではないか。