学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

経済学を簡単に

最近、経済学の再学習に励んでいる。民主主義と同じように、資本主義も再検討が必要とされる時代なのかもしれない。考えてみれば、民主主義も資本主義も所与のものとして、それ自体を疑うことなしに受け容れてきた経緯があったのではないだろうか。そして、それらがほぼ一世紀という単位で無検証的に運用されてきた結果、弊害が起きつつある。こうした時、原理原則、根本に立ち返って考える必要が出てくる。

その際、我々は過去に何があったか、どういうことがどのように検討されて考え出されてきたのかという歴史を知らなければならない。でなければ、既に先人たちが検証を終えたことを1から独自に検討する無駄な時間を過ごすことになる。新たな学問的問い掛けが歴史の中にあることは、すべての学問に「~学史」という分野があることからも容易に知ることができる。一見すると現状目の前の問題解決に直接的には繋がらないから、現代の刹那的傾向にある人々からは敬遠されることでもある。

本書は、重商主義重農主義、古典派経済学、歴史学派と制度学派の経済学、新古典派経済学マルクス経済学という経済学の歴史を具体的な理論家の紹介とともに概観してくれている。本書の最大の利点は、理論の概説書ではなく、あくまでも歴史の流れとして書いている点にある。それぞれの経済学が背景に持つ時代的要請を述べながら経済理論を位置付けていく。

ただし、本書はおそらく経済学に明るくないと記述が難しく、理解がきつくなると思われる。新書という一般向けに書いたわりには専門的に過ぎ、専門家からすると大雑把にすぎるという批判を受けるかもしれない。読者層の設定でどっちつかずになっている感は否めない。だから、入門書として本書をお勧めすることはできないが、一度学んだことがある人や概説書などで学んだことがある人向けとしては、新たな発見を見いだせる良書となるだろう。最初に学んだ時に分からなかったことや、公式のように無機質に覚えていたものが有機的になるかもしれない。

考えるためには材料が不可欠である。しかも、偏りなく広く見るためにはジャンルを超えた量も必要である。こうした観点から専門外のモノにも手を出している。現在の学問は専門的領域に細分化され、学問的には分断された島々である。その島々を架橋するような大きな物の見方が失われた。だから、本ブログは「学際知」を掲げている。「学」には歴史としての縦の側面がある。そして「際」は学問と学問が接するところであり、いわば横の広がりである。そこから、「地平」という全体像を見渡せるようになったらとの願いを込めている。