学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

保守主義について

保守主義といえばバークではあるが、オークショットも外しがたい。今年のお盆の時期を利用して、ざっと3冊に目を通した。現在の日本で保守派といえば、コテコテに飾り立てたゴテゴテした保守主義者が目立つ。学生時代に学生運動に没頭した人が保守へ転向した場合は特に、必要以上に保守的になる。いわゆる「典型的な日本人」が現実離れした姿を持ち、そのような日本人は現実にはどこにもいないのと同じように、「典型的な保守主義者」は、現実的には保守主義者から遠い存在になっていると思う。

では、保守とは何か。保守というのは「保守点検」で使われるように、漸次的に改善を進め、悪いところは改め、良いところは取り入れていく姿勢であると思うし、道徳的倫理的に頑なな姿勢を意味しない。古き良きというのは伝統主義であって、保守主義の旗印ではない。保守主義はもっともっと緩やかで穏やかなものであると思う。

保守主義は漠然としたものであって、概念化や理念化、体系化が難しい。究極的には自然体であり、理性や知性を過大評価せず、感性も大切にしているものだ。近代合理主義や構築主義的な思考に対して懐疑的である。懐疑的というのは疑うということで語感が悪いが、実は「保守点検」しているに過ぎない。保守点検する際には、「壊れているかもしれない」とか「正常に作動していないかもしれない」と疑うところから始まる。

思想は常に時代的背景とともにある。バークの保守主義フランス革命に対する懐疑である。そうした歴史的文脈を抜きにしては読み間違う。もちろん、日本の保守主義の時代背景が違う以上、バークやオークショットの保守主義と日本の保守主義は違う。日本の場合にはマルクスとの対峙である。しかし、その根底にある穏やかな思考には共通のものがあるだろう。そんなことを思いながら、昔の本を取り出して再読した。

 

保守主義の社会理論―ハイエク・ハート・オースティン

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増補版 政治における合理主義

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市民状態とは何か

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