学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

政治論考

18歳選挙権について

来年から選挙権が18歳に引き下げられる。具体的には来夏の参議院選挙から適用されることになる。今年の6月に法律が成立し、1年間の周知期間を経ての実施となるからである。選挙権の年齢が変更されるのは、1945年の25歳から20歳への変更以来、70年ぶりのこ…

価値観の対立が行き着くところ

18日に投稿した「パリ同時テロについて」の記事の中で、僕は話し合いができないほどに価値観に隔たりがあり、軍隊同士の戦いのうちは引き際や交渉が成り立つが、全面降伏か皆殺しかという選択肢しか理論的には成立しないと書いた。「軍隊同士の戦いのうち」…

制度とその運用

僕の専門は「比較制度論」なのですが、「制度論」なんてものをしていると、時々、虚しくなることがある。というのは、結局は「運用している人の問題」に行き着くからだ。どのような制度を制定するにしろ、そこには必ず運用する人の存在と離れて存在すること…

生活保護の精神

10月9日、神奈川県議会県民企業常任委員会で、朝鮮学校に通う児童・生徒へ直接支給する学費補助金を受給している生活保護の5世帯のうち、4世帯が計約52万円を、年収250万円未満の非課税世帯の49世帯のうち45世帯が計約841万円を朝鮮学校に納付していたこ…

トゥキディデスの罠と国際秩序

紀元前5世紀、新興のアテネと、それに対抗する既存勢力のスパルタとの間にぺロポネソス戦争が起きた。ここから歴史家のトゥキディデスは「新興の大国は必ず既存の大国へ挑戦し、既存の大国がそれに応じた結果、戦争がしばしば起こってしまう」との法則を見…

仏の話に耳を傾けよ

まぁ、なんというか、宗教家は世俗のことに口出ししないほうがいいと思う。宗教の世界に生きていれば「いい話」をする人で終わるのだろうが、政治の話を「法話」として語ってくるのであれば、それは仏教への冒涜であるように感じる。世俗の話として、この「…

国民の姿は国会議員の姿

まずは産経新聞の記事を見てほしい。 ここで注目したいのは、「衛視から『示威行為に当たる』として注意を受けた」点である。山本太郎議員による喪服&数珠&焼香の物真似はパフォーマンスと報道されたが、これもデモンストレーションであり、「示威行為」で…

安保関連法案の論点整理

今般の安全保障関連法案がなにか、不明な人も多いことだろう。もっとも、こんなに国民的議論になっている安全保障関連法案を知らない人が多いのは不思議でもある。賛成派も反対派も何に賛成し、反対しているのか、不明なままに意思表示をしているような感す…

デモはデモでもデモ違い

安全保障関連法案をめぐって、国会周辺で、あるいは日本全国あちこちでデモが行なわれている。多く報道された場面で、「国民の声を聴け」とか「国民の声を無視するな」と叫び、反対として集まった群衆の大きさを誇張して伝えていた。17日に参議院の委員会を…

21世紀の自然状態

鬼怒川が決壊した常総市に本社を置く菓子メーカーの駄菓子や、農林水産省が14年12月に発表した平成25年農業産出額で6年連続全国2位を獲得した茨城県の野菜や果物を「食べて支援しよう」という動きがツイッターで広がっているという。現地に赴いてのボラン…

人類の壮大なる実験

今年だけでヨーロッパに流入した難民の数は、45万人に及ぶという。この数字のすごさは比較を通してより明らかとなる。 東京都江東区の人口は23区中8位の46万人、東京都葛飾区の人口は同9位の44万人である。日本で一番人口の少ない都道府県は、鳥取県の57万…

儚いほどの主権者

「国民主権」「主権在民」とは、日本の政治の在り方を規定した概念である。すなわち、「国の権力は国民が持ち、政治は国民によって行なわれる」ということである。これを一言で「民主政治」という。 さて、ここで少し立ち止まって考えてみよう。 「主権」と…

非礼な意見表明

今、安保法案が巷間の話題に上っているが、少し整理してみたい。 基本的に賛成派・反対派の主張は平行線である。お互いがお互いを「分からず屋」と思っていることだろうと思う。それは同じ現象をどう捉えるかという価値観と視座の問題だからである。テレビで…

ダウントン・アビー

僕の大好きなイギリスのドラマ『ダウントン・アビー』をめぐって、「シネマ・トゥディ」が次のように報じた。 最終シーズンを迎えるテレビドラマ「ダウントン・アビー」は、エリザベス女王をもとりこにしているとPeopleが報じた。 「アット・ホーム・ウィズ…

イデオロギーの終焉

ダニエル・ベルが1960年に刊行した「イデオロギーの終焉(The End of Ideology)」では、先進資本主義諸国における「豊かな社会」の到来とともに、階級闘争を通じた社会の全面的変革なる理念はその効力を失ったとされた。ベルやシーモア・M・リプセットを代…

矛盾だらけの人々

中国で抗日戦争勝利70周年を記念した行事が取り行われた。アチコチに突っ込みどころ満載で、なにからどう書けばよいやらという感じだ。まずは、記念撮影を見てもらいたい。 真ん中に習近平国家主席夫妻が「鎮座」し、左にロシアのプーチン大統領、右に韓国の…

なんか気持ち悪い

9月3日、次の二つのニュースに触れて、気持ち悪さを感じた。 オバマ大統領 戦後の日米は「和解の模範」 NHKニュース “最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇示 “最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇示“最新兵器”パレードで 習政権の力、内外に誇…

カラスへの名誉棄損

「烏合の衆」という言葉がある。この言葉を使おうと思って、ふと立ち止まった。この表現は、カラスが集まってカァーカァーとやかましい状況を指し、そこから規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの役立たずの群集や軍隊のことを意味するようになった。 当…

泥縄

安全保障関連法案に関して、当ブログでも一言、付言しておきたい。 安全保障関連法を成立させると、やれ徴兵制が始まるだの、やれ戦争が始まるだのという立場の人たち(主に野党や一部の運動家)がいるが、僕の立場は、それらと真っ向から対立する。誰かが指…

中国という民主国家

中国は民主国家である。こういうと首をかしげる人が多いかもしれない。だからこそだろう。中国共産党機関紙がフランスの新聞に鋭く反応している。フランス国際放送、RFIのニュースサイトで「今の平和主義の日本が、軍拡主義の中国に服従することはない。…

『意識高い系(笑)』追加記事

2015年8月27日(木)配信の『意識高い系(笑)』記事に関連して、東洋経済オンライン 8月29日(土) 6時00分配信の『志願者が殺到する「人気の大学」トップ100』の記事の中に興味深い報道を見かけたので、追記しておきたい。 「最近の入試では、就職を考えな…

モノの見方

モノの見方にはいろいろなものがあると思う。時にはこれが原因で対立したり、議論が平行線のままに終わってしまうこともあるだろう。相手を理解できないとか、「斜め上からの回答」という状況を生んでしまう。今日はそんなお話。 西欧の近代合理主義的な自然…

アメリカ流『国民の育て方』

アメリカ大統領選挙のニュースが入り始めた。これから来年にかけて盛り上がりを見せてくるだろう。前々回選挙では,アメリカもずいぶんと寛容になったものだと感じた。移民で成立する人工国家は,民主共和両党ともに世界的には保守的であり,米国民も保守的…

ヒーロー渇望症候群

最近,甲子園での高校野球に関する報道を見ていて,本当に日本人はヒーローが好きなんだなぁと思う。野球は少なくともチーム戦のはずであるが,ある特定の選手以外は蚊帳の外である。ある活躍した高校一年生をして「~の夏,終わる」というタイトルの付け方…

命の価値を下げる行為

「学生ハンスト実行委員会」が、安保関連法案制定を阻止するために、現役の大学生たちによって8月27日(木)より国会正門前でハンガーストライキを決行することを発表した。 声明文 - 学生ハンスト実行委員会「僕らも生命をかけてやるという覚悟はある」と…

教育基本法

昭和天皇の学ばれた教育勅語 作者: 杉浦重剛,所功 出版社/メーカー: 勉誠出版 発売日: 2006/03 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 23回 この商品を含むブログ (17件) を見る 日本の教育基本法は、明治維新の際に出された「教育勅語」が最初である(「教…

4つのポスト時代

もう10年近く前のことになるだろうか。放送大学の哲学講義を受けていて、4つの時代状況の認識について学んだ。その時代認識とは、①ポストモダン、②ポストナショナル、③ポストグーテンベルク、④ポストヒューマンである。 英語の接頭辞 "post-" というのは、…

保守主義について

保守主義といえばバークではあるが、オークショットも外しがたい。今年のお盆の時期を利用して、ざっと3冊に目を通した。現在の日本で保守派といえば、コテコテに飾り立てたゴテゴテした保守主義者が目立つ。学生時代に学生運動に没頭した人が保守へ転向し…

思想が先か制度が先か

「思想が制度を造るのか、制度が思想を産むのか」という問いかけは、「ニワトリが先か卵が先か」という問いかけと同じく、不毛なことなのかもしれない。ある考えに基づいて制度が造られるのか、逆に制度が成立してのちに思想が産まれてくるのかというプロセ…