学際知の地平

ポストモダン・ポストナショナル・ポストグーテンベルク・ポストヒューマンな時代に不気味な民主主義を考える

哲学思想

AIのつくる未来

今月初頭、人工知能(AI)分野の人材育成を進めるため、文部科学省は今秋、全ての大学でAIの基礎を学ぶことができるよう全国共通のカリキュラム(教育課程)を作成すると発表した。ビッグデータ活用を学ぶ大学の事例などを参考に文系、理系の枠を超えた…

思考実験は非現実的でよい

日本維新の会の丸山穂高衆議院議員の発言が問題になっている。少し引用しよう。 北方四島の「ビザなし交流」の訪問団に参加した日本維新の会の丸山穂高衆議院議員は訪問団のメンバーに「戦争で島を取り返すことには賛成か反対か」などと質問したことについて…

「教養」とは何か

歳末になると、「教養」を特集に取り扱った雑誌などが増えてくる。「教養」を広く浅く解説したり、入門となる書籍を紹介したりといった具合である。長期休暇を前に一念発起する人が多いのだろう。しかし、なぜ「教養」を身に付けることを人々は求めるのだろ…

トップに必要なものは何か

とあるブログで紹介された。そこでは「トップの仕事は総称して判断。判断とは全知識の総体」とあったので、今回はそれについて考察してみたい。 判断力というのは、哲学的には「特殊を普遍のもとに関係づける能力。普遍が与えられていて、それに特殊を包摂す…

思想・思考という木から落ちる言の葉②

さて、昨日の『思想・思考という木から落ちる言の葉①』の続きです。昨日の投稿で例に出したようなものは、言葉の伝えるニュアンスが「単語が異なる」ために非常に分かりやすい例でした。今日は同じ表現を用いながらも「異なるニュアンス」を持つ厄介な「単語…

思想・思考という木から落ちる言の葉①

1ヶ月ぶり以上の更新である。 僕は常日頃から「言葉を大切にして文章を書こう」と言っています。それは、「文章を書く」という行為そのものが「小さな思考」の表出であり、その小さきものの積み重ねが「思想」になると思っているからです。逆説的ですが、思…

志望動機の書き方

就職活動における学生の志望動機書を添削していると、最近の若者の傾向が分かる。そんな中でも、とくに2つのことが気になっているので、今回はそれらについて書こうと思う。 1つめは、「人目を気にしすぎること」です。志望動機とは、志すこと・望むことの…

ムラ社会とグローバル世界

今回は政治的に微妙な話題となることを最初に申し上げておく。そして、いわゆる「差別」意識なく率直に思うところを述べていくので、そういう前提で読んでいただけたらと思う。 先日、大阪なおみ選手がテニスの4大大会「グランドスラム」で優勝した。興奮し…

名誉が重んじられる社会に

8月6日に投稿した記事に関連して、今日8日の読売新聞に同様の趣旨の記事が載った。「時代の流れに逆行」との批判もあろうが、実際の医療現場で女性医師の職場離脱が問題であると指摘した小欄の記事を追認してくれる記事である。 しかし、その後の報道を見…

常識と良識

こうした概念の問題にあたるときは、まずは辞書(広辞苑)を引いてみる。 常識 普通一般の人が持ち、または、持っているべき標準知力。 専門的知識でない一般的知識とともに、理解力、判断力、思慮分別などを含む。 良識 偏らず適切・健全な考え方。そういう…

完璧ということ

完璧主義者に安穏は訪れない。でも、完璧主義者には憧れる。なんせ仕事も遊びも完璧なのだ。とはいえ、しょせんは人間のすること。人間のすることに真の完璧ということは存在し得ないだろう。だから、人間のすることに完璧という場合、神学的・哲学的・思想…

論理と人情

先帝陛下のご兄弟は、秩父宮様、高松宮様、三笠宮様がおられ、三笠宮様には寛仁親王殿下、桂宮様、高円宮様がおられたが、すでにお隠れになられた。今上陛下のご兄弟には常陸宮様(81)がおられる。皇位継承者は徳仁親王殿下(57)、文仁親王殿下(51・秋篠…

楽観的に目標を見て、悲観的に手段を考える

昔、自分の影響力が自分のみだった頃、あるいは友達と対等に接している頃、僕の発言は自由気儘に思った通りを言っていれば済んだ。ところが、いやしくも教壇に立つようになると、その発言は「回答」ではなく、ある種の「正解」になってしまうのである。僕の…

表世界と裏世界

久方ぶりの更新である。言い訳にしか過ぎないが、年度の終わりと始めは目を回すような忙しさで、ブログ執筆を怠けていた。この間、各方面から何人か書くように促されたが、今日の今日まで延ばし続けてしまった。 さて、今回のテーマであるが、森友学園問題を…

ポスト・ヒューマンについて

つい先日、インターネットを利用して、アメリカ合衆国から商品を購入してしまったが、これは決してトランプ大統領への協力ではない。Buy Americanでアメリカ合衆国の富創出の枝葉に参加してしまったが、この商品を注文したのは就任演説以前である。こう言い…

ポスト・グーテンベルクについて

新春特別企画4回シリーズの第3回目は、「ポスト・グーテンベルク」についてである。前回までと同じ要領で、「ポスト」は「~の後」という意味なので、今回は「グーテンベルク」についての話から始めたい。 グーテンベルクは、ヨハネス・ゲンズフライシュ・…

ポスト・ナショナルについて

新春特別企画4回シリーズの第2回目は、「ポスト・ナショナル」についてである。第1回目と同じ要領で、「ポスト」は「~の後」という意味なので、今回は「ナショナル」についての話から始めよう。「ナショナル」とは「国家の」とか「国民の」という意味の…

ポスト・モダンについて

新春特別企画4回シリーズとして、当ブログの時代の捉え方について、第1回目は「ポスト・モダン」について扱う。実はこの「ポスト・モダン」は言葉としてよく耳にするものの、各論者の文脈によってさまざまに定義され、これと明確な姿を描けない。実に曖昧…

知の源泉としての哲学

この画像は、とある本屋さんの一角である。「哲学」という言葉が面と向かってタイトルにある本が多いことに驚く。少し前には「哲学」は難解で、なんとも近寄りがたいものとして敬遠されてきたように思う。せいぜいがビジネス書として誰かの「人生哲学」とか…

差別とはなにか

NHKの連続テレビ小説「あさが来た」がいよいよ最終週になる。月曜~土曜まで毎回を楽しみに視聴してきたので、とても悲しい(涙)。明治創世期の日本がどのような歩みを進めてきたのか、教科書にはない地方の話を知れるだけでなく、そこに生きた人々の姿を…

フーコーさんは言いました

「自己監視システム」は近代以降の人間社会のどこにでも見られる。自分の中に監視者がいて、その監視者がもう一人の自分を常に監視しているシステムのことです。これは日常的には「自律」とか「良心」という言葉で表現されているようなものです。 そもそも、…

「2ちゃんねる」を好きな理由

僕は結構「2ちゃんねる」が好きだ。一つには歯に衣を着せない本音が垣間見えるからだ。本来であれば口にすると社会的関係が傷ついたり人格を疑われたりすることから表に出せない感情を、匿名掲示板ゆえに率直に表に出しているからである。人は理屈通りには…

信念について

「信念」は英語で表すとfaith、beliefである。faithはラテン語で「信じること(fides)」が語源であり、これは「信仰」という意味により近い。beliefはドイツ語の「神を信じる」というglaubenが元になったとも言われている(他説あり)。ということは、西洋に…

境界線を意識すること

今日でブログ開設から6ヶ月が経ちました。いつも読んでいただき、ありがとうございます。ブログは「表現の自由」の手段ツールの1つですが、これについて今日は考えてみたいと思います。 「表現の自由」は「表現の暴力」と紙一重である。あるものが「表現の…

理想の自分の作り方

価値観というのは、非常に扱いにくいものである。それは個人から集団に至るまで、さまざまなレベルの思考傾向を包含している言葉だからである。かつ、他者の価値観を尊重せねばならないから、なお一層、厄介なものである。 たとえば、「価値観の不一致」を理…

今年は80投稿越えを達成しました

当ブログは、今年2015年8月15日にスタートした。その日から大晦日まで138日間ある中で、記事数は80投稿を超えた。単純計算で1.6日に一度は投稿してきたことになる。最初の宣言記事などもあると思えば、まぁ、2日に一度の投稿という数値であろうか。もっと…

時間の見える化

さて、昨日に続いて手帳術の話をしようと思う。 バーティカル(縦書き)であれホライゾン(横書き)であれ、1日の予定を書き込んでいると、特に予定がないところは白紙になる。これは相手のある予定を書き込む、あるいは自分の目標なりルーティンなりを書き…

手帳の使い方

年の瀬も迫り、いよいよ新しい手帳に書き込み始めることも多くなった。インターネット上には多くの人が手帳術を紹介し、また、手帳術に関する書籍雑誌が溢れている状況で、いまさら僕が参加したところで、誰かの二番煎じであろうとは思う。しかし、大海の一…

振り子のバランス

師走に入って小説を一つ二つ手に取り、感じたことがある。 小説や漫画を含めて、昔の作品には作者の思い、すなわちテーマであるとか主義主張であるとかを伝えようとする作品が多かったように思う。そういう思いがあって絵筆を取る経緯があったのではないだろ…

感性は教養に裏打ちを受ける

なにを美しいと感じるかは、実は対象物に拠るものではない。美は対象物それ自体に内在しているものではなく、受け手がそれをどのように受け止めるかにかかっている。つまり、同じものを見ても、それを美しいと感じるかどうかは、観察者に拠るのである。なに…